循環器ジャーナル Vol.69 No.4－プレシジョン・メディシン時代における腫瘍循環器学の重要性 [単行本]

循環器ジャーナル Vol.69 No.4－プレシジョン・メディシン時代における腫瘍循環器学の重要性 の 商品概要

• 内容紹介

  　超高齢社会の到来に伴い、がんの罹患者が増加しつつあるが、いわゆるプレシジョン・メディシンの時代を迎えて、がんの予防・診断・治療技術も急速な発展を遂げており、今後がんサバイバーの数が急増すると予想されている。
  
  　循環器領域では、以前からアントラサイクリン系薬剤の心毒性や放射線治療に伴う心血管障害の存在は知られていた。しかしながら、最近登場した分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬などでは、いわゆるがん治療関連心血管疾患（CTRCD）として、心不全、動脈硬化症、心臓弁膜症、高血圧症、不整脈、血栓塞栓症、末梢血管障害および心膜疾患などのまったく新しい病態が出現しつつある。
  
  　さらに、がんと心血管疾患には、年齢・喫煙・肥満を含めた共通の危険因子が存在する。したがって、基礎研究では炎症を含めたメカニズムの解明が、また実臨床ではハイリスク患者に対するがん治療およびハイリスクがん治療を受けた患者における心血管疾患を予防・診断・治療する体制の整備が、それぞれ世界的な課題となっている。
  
  　腫瘍循環器学（Onco-Cardiology/Cardio-Oncology）は、腫瘍専門家と循環器専門家による学際領域の職種間連携である。既に欧米では、まず臨床ニーズに基づいて医療現場におけるCTRCDに対するチーム医療として始まり、続いて研究シーズに基づいて国や学会レベルにおけるトランスレーショナル・リサーチおよびその支援体制が発展しつつある。
  
  　特に、診療ガイドラインを作成する過程において、これまでOncologistはがん治療完遂を、CardiologistはCTRCDの予防・診断・治療を追求してきたが、今後はがん患者の生命予後向上という目標を共有することで、がん治療前・治療中・治療後の全段階における基礎研究・臨床研究・疫学研究で連携する必要性が明確になった。
  
  　わが国でも、2017年の日本腫瘍循環器学会設立が起爆剤となり、各医療機関に腫瘍循環器外来が設置され、学会間の連携による診療ガイドライン作成作業やその根拠となる共同研究への支援が始まるなど、着実な進歩が認められている。
  
  　今回、主に若手の循環器医を対象として、教育・診療・研究の最前線で活躍されているエキスパートの先生方に、腫瘍循環器学の現状および今後の方向性についてご執筆をお願いした。本特集により、読者の方々の理解と認識が深まり、この新たな学際領域がさらに発展することを期待したい。
  
  （順天堂大学大学院医学研究科臨床薬理学　佐瀬一洋）

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