「身体活動」からみる子どもの体力-日本型「体力重視」をグローバルに捉え直す [単行本]
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「身体活動」からみる子どもの体力-日本型「体力重視」をグローバルに捉え直す [単行本]



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出版社:南江堂
販売開始日: 2025/12/08
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「身体活動」からみる子どもの体力-日本型「体力重視」をグローバルに捉え直す の 商品概要

  • 目次

    【書評】
     幼児から高校生までの“子どもの体力”について,過去50年間,日本の政府審議会は現状を憂慮する報告をしてきた.1970年代,体格の向上に体力・運動能力の向上が伴っていないと指摘し,2000年前後には体力・運動能力の低下傾向と二極化がすすんでいると報告した.2010年代には体力・運動能力の低下傾向には歯止めがかかったが,1985年ごろの高水準に比べて低い状態が続いているとし,2022年には新型コロナウイルス感染症の拡大で体力・運動能力の低下と二極化が進行したと答申した.これらは主要新聞を通じて報道され,世論形成がなされてきた.著者らは,まえがきで「そろそろ『ちょっとおかしいんじゃない?』という疑問や見直しの声が上がってもいい頃ではないか」と本書を著す動機を述べている.

     本書は,「“子どもの体力”について現代日本人がもつネガティブな(偏った)見方を補正すること」と,「体力よりも“身体活動”を重視するようになった現在の世界(the present world)のトレンドを広く日本の人々に紹介する」ことをねらいとし,前述の言説に対して,「身体活動」という視点を軸に,現代の“子どもの体力”の実態と課題および方策を,国際比較を通して7つの章立てで論じている.

     第1章「国際比較を通して知る,日本の子どもの身体活動の現状(1):優れた点,長所」および第2章「同(2):問題点,課題」では,著者らが参画している子どもの身体活動に関するActive Healthy Kids Global Alliance(AHKGA)の2022年国際調査(Global Matrix 4.0)を通じて,日本の子どもは国際的に高い体力を示す一方,スポーツ以外の生活活動を含めた身体活動は注目されていない実態を明らかにしている.本書のねらいである,“子どもの体力”について現代日本人がもつネガティブな見方が補正されるとともに,世界的標準である身体活動の重要性を知る章となっている.第3章「グローバルな視点から提案する,日本の子どもの体力論・身体活動論」では,富国強兵政策の名残ともいえる,日本の子どもの体力重視は,欧米の身体活動への重視とは乖離していることを示し,新しいグローバルな視点からの体力論・身体活動論を提起している.これまで日本では専らスポーツ活動のみを調査しており,これは第4章「現在世界で身体活動といえば」での国際的な身体活動の定義に基づく日常生活全般の身体活動を評価する必要性の論拠となっている.第5章「日本の大人は子どものロールモデルとなっているか」では,世界的に広がる保護者の身体不活動に焦点をあて,子どもの身体活動に関連する保護者の身体活動への取り組みの重要性を説いており,新しい視点を気づかせる.これらは,本書の第二のねらいである,現在の世界のトレンドの紹介であるとともに,日本の将来を担う次世代の,子どもの身体活動に責任をもつべき保護者(大人)の使命を再認識させるものである.第6章「日本国内にある地域差」や,第7章「障害のある子どもへのアプローチ」では,教育界の取り組みだけでは解決できない身体活動の地域差の課題や,障害のある子どもの低い身体活動量に焦点をあて,社会・経済・医療・政策の多面的・俯瞰的観点からその課題解決のための方策を提案しており,一教育論に終わらない.

     本書は,日本人のもつネガティブな“子どもの体力”の見方を,世界標準の“身体活動”という視点から比較し,多面的・俯瞰的にとらえなおす良書であり,整形外科医,教育関係者,保健師,理学療法士,スポーツ指導者や大学院生にとって有用である.また,行政関係者には各国の政策やプログラム設計が参考になる.平易な文章と多くのイラスト,図表でわかりやすく,保護者向けの啓発材料としても活用できる.さらに,付録の「『子どもの体力』をめぐる公的文書(政府審議会答申)の記述」は,議論の基盤となる国内調査の歴史を知るうえでたいへん参考になる.「身体活動」から子どもの体力を考える本書は,現代的課題を整理し,実践的提言を提供する点で価値が高く,一読をすすめる書である.

    臨床雑誌整形外科77巻5号(2026年5月号)より転載
    評者●島根大学整形外科教授・内尾祐司)

    【序文】
     世の大人たちは常に、同時代の子どもたちの何かを憂えるもののようです。最近の子どもはアレがだめ、コレがいかんといったように。そのこと自体、子どもたちの将来のために良かれと願う気持ちの表れであれば尊いのですが、その憂いの確かさや当否(当たりはずれ)となると、おおかた個人の見聞や記憶によるものであって怪しい――というのが世間の“通り相場”でしょう。
    そうした大人たちによる憂いの対象(アレやコレ)は、時代とともに変わります。例えば、本書の著者二人(現在50代)が子どもだった1970~1980年代は、コミック誌(少年・少女向け漫画雑誌)全盛の時代で、当時はよく「漫画ばかり読んで本を読まない(からだめだ)」と責められました。また、激烈な受験競争のせいで心のほうの成長が云々と言われることもありました。しかし、そのどちらも今日ではあまり聞かれません。

     さて、そうして変わりゆく憂いの中に1つ、時代を経ても変わらずに、時々の日本の大人たちが憂い続けているように見えるものがあります。それが、「最近の子どもは体力が低い」とか、「下がった」とかいう問題です。そうした憂いの“もと”と目される公的文書を過去数十年間さかのぼって見ると、断続的にではありますが、たしかに、子どもの体力は(何かに比べて)低い/下がったと言われ続けています(巻末付録)。となれば、今日生きている日本人のほぼ全ては、子どもの体力についてもっぱらネガティブな言説ばかり見聞きしてきたことになります……が、そんな例が果たしてほかにあるでしょうか。

     そうした状況に対して、そろそろ「ちょっとおかしいんじゃない?」という疑問や見直しの声が上がってもいい頃ではないか――と筆者らは思います。そして実際、見直しのための材料も揃ってきたように見えます。

     筆者らが本書を著すねらいは、大きく2 つあります。1 つは、〈子どもの体力〉について現代日本人が持つネガティブな(ネガティブに偏った)見方を補正することであり、もう1つは、体力よりも〈身体活動〉を重視するようになった現在世界(the present world)のトレンドを広く日本の人々に紹介することです。それらを果たすために、これまでの、もっぱら国内に閉じた古い目ではなく、世界に開かれた新しい目をもって、日本の子どもたちの体力や身体活動を見直すよう提案します。そのようにして見直せば、きっと、これまではマイナスに見えていたものがプラスに見えたり、これまでは気付かなかったことに気付けたりします。また、そうした新しい目は、世界に蔓延する身体不活動に対抗し、子どもたちをより元気に育成するための武器ともなることでしょう。

     本書の想定読者は、端的に言えば〈子どものからだ〉に関心のある全ての日本人です。まずは、教育関係者、体育・スポーツ関係者、保健・医療関係者、さらに健康や教育・子育てに関する情報を世に伝えるメディア関係者など、子どものからだに関わるシゴトに携わっている人々が挙げられるでしょう。その一方、シゴトではなくとも、今まさに子育てをしている大人たちや、育ちつつある我が身と向き合っている子どもたちこそ、本来最も切実な本書の読者であるかもしれません。そのように考えれば、本書と無関係な現代日本人は一人もいない――とさえ言えそうです。

     ところで、本書中の〈子ども〉という語についても、あらかじめ説明しておかなくてはならないでしょう。文中にはしばしば、「子ども」のほかに「子ども・青少年」というまぎらわしい語句も現れますが、そのことにも一応の理由はあります。

     本書でいう子どもとは、基本的に、幼児から高校生までに相当する幅広い年齢の人たちのことです。それは、本書の想定読者が日本人であることにかんがみ、日本の世間における慣習的な用語(子どもという語の使われ方)に倣ったものです。

     しかし、そうした日本の世間の外、特に世界とつながる学術界では、本書でいうところの子どもを〈子ども〉と〈青少年〉とに分けて捉え、表現する傾向があります。すなわち、おおむね小学生ぐらいまでの、いわゆる発育スパート期/第二次性徴期を迎えるよりも前の人たちを子ども(children)といい、それより後の人たちを青少年(adolescents)と呼びます。学術界は本書の最も重要な情報源・基盤ですから、そこにある傾向を無視することはできません。

     そのため本書でも、やむを得ないときや必要なとき(例えば、もとの文献・資料が子どもと青少年とを明らかに区別して論じているときなど)には「子ども・青少年」と表記することにしています。

     本書には、3つの特徴・特長があります。
     1つ目は、子どもの身体活動に関する前例のない国際比較調査に、日本を代表して参加している研究者(田中)が、専門的かつ信頼性の高い“一次情報”をもたらすこと。一次情報とは、伝聞ではなく当事者が自ら語る情報のことです。

     2つ目は、それらの情報を、現代的な言語技術によって効率よく、わかりやすく表現すること。この点は、二人目の著者(渡辺)が主に担いました。ここでいう現代的な言語技術とは、具体的には〈重点先行〉のポリシーと、いわゆるパラグラフ・ライティングです。それらを用いることの効果は、端的に、見出しと各段落(パラグラフ)第1文を拾い読めば要旨をつかめるという点に表れます。

     3つ目は、ところどころに配した挿絵が、楽しみながら読み、理解することを助けるであろうこと。これについては、久保谷智子さんの力を借りました。

     最後に1つ、あらかじめ読者に断っておきたいことがあります。それは、本書に記された見解などは、あくまでも筆者らの個人的なものであり、筆者らが参画する研究組織や所属する教育機関・行政機関の見解などとは必ずしも関係しないことです。そのため、本書の中に(意図せず)記されているかもしれない誤った事実や偏った解釈・判断などの責任は、まずもって筆者らに帰せられるべきであることを、頭記しておきます。

    2025年11月
    田中千晶・渡辺哲司

    【目次】
    第1章 国際比較を通して知る、日本の子どもの身体活動の現状(1):優れた点、長所
     第1節 国際比較調査の代表例:AHKGAのGlobal Matrix
      1 Active Healthy Kids Global AllianceとGlobal Matrix
      2 各国・地域が作成する“Report Card”
     第2節 GM4.0(2022年)が示す日本の現状
      1 総合的な評価
      2 体力――主として全身持久力
      3 活動的な移動手段――徒歩・自転車による通学
     第3節 学校制度をベースとしたさまざまな取り組み
      1 体力・運動能力の測定、運動習慣等の調査
      2 学校での健康診断・身体計測
      3 全国共通のカリキュラムと学校施設
      4 運動部活動
      5 徒歩・自転車での通学を可能にする、公立学校の配置
     コラム① スコットランドの公立小学校における食
    第2章 国際比較を通して知る、日本の子どもの身体活動の現状(2):問題点、課題
     第1節 長いスクリーンタイム
      1 世界と日本の現状
      2 現在日本の複雑な事情
     第2節 家族の支援にあまり恵まれていないこと
     第3節 評価できなかった「活動的な遊び」
     第4節 身体活動の捉え方が“世界標準” ではないこと
     第5節 世界の“グッド・プラクティス”
      1 他国の状況を見て、知って、学ぶ
      2 総合的な評価が最高の国
      3 指標ごとの評価が最高の国と、その理由
     コラム② 大人の前向きな声掛けが、子どもの有能感を高める
    第3章 グローバルな視点から提案する、日本の子どもの体力論・身体活動論
     第1節 体力と身体活動
     第2節 「体力」重視の歴史的経緯
      1 日本では今なお不変
      2 かつては他国も体力重視
     第3節 世界のトレンドは「身体活動」重視へ
      1 欧米における変化
      2 日本はどうふるまうか
     第4節 「体力低下」を掘り下げる
      1 真相は個人差の下方拡大
      2 「体力低下」言説への疑問
     第5節 これからの日本の体力論、身体活動論
     コラム③ AHKGAと日本チームの活動
    第4章 現在世界で身体活動といえば
     第1節 身体活動の定義と測定法
      1 身体活動とは
      2 日常生活全般の身体活動量をどう測るか
     第2節 日本の方法は独特――“世界標準”と異なる
     コラム④ 身体活動量の評価方法
    第5章 日本の大人は子どものロールモデルとなっているか
     第1節 子どもと保護者の身体活動量には相関関係がある
     第2節 成人の身体不活動も世界に蔓延
      1 懸念される成人の身体不活動
      2 性・年齢による違い
     第3節 生活時間の男女差がとりわけ大きい日本
     第4節 保護者も動いて健康に、幸福に
      1 身体活動は保護者自身の健康と幸福につながる
      2 生活活動の中には、あれもこれも
      3 知れば、やる気に(筆者らの期待)
     コラム⑤ 市民の身体活動や交流を支援する街、グラスゴー
    第6章 日本国内にある地域差
     第1節 通学時の活動的な移動(徒歩・自転車による通学)
      1 現状に見られる地域差
      2 経年変化に表れる地域差
     第2節 運動部やスポーツクラブへの加入
      1 現状に見られる地域差
      2 最近の懸念
     第3節 スクリーンタイム
     コラム⑥『子どものスポーツ格差』と本書
    第7章 障害のある子どもへのアプローチ
     第1節 またも世界の専門家が協力――AHKGAによる国際調査
     第2節 日本が取り組むべきこと
      1 運動・スポーツへの参加をさらに促す
      2 調査体制をいっそう整える
      3 国の方針は前向き、その実現が課題
    付録:「子どもの体力」をめぐる公的文書(政府審議会答申)の記述
     第1節 探索の出発点:1961年の文部大臣諮問
     第2節 探索の材料:政府審議会答申
      1 「政府」「審議会」「答申」
      2 政府審議会と答申の性質
      3 材料とした審議会答申のリスト
     第3節 そこに書かれていたこと
      1 第1期:1972年
      2 第2期:1976ー1989年
      3 第3期:1997ー2008年
      4 第4期:2012ー2017年
      5 第5期:2022年
     第4節 探索のまとめ
  • 内容紹介

    スポーツに限定されない,遊びや日常生活を含む「身体活動」の観点から子どもの健康な発育・発達のために必要な知識をやさしく解説.スマホの普及やコロナ禍を経て生活様式・環境が激変した現在,国際比較研究から日本の子どもの体力を的確に評価する新たな視点を提供する.学校・教育関係者や医療職として子どもと接するすべての人にとって必読の一冊.

「身体活動」からみる子どもの体力-日本型「体力重視」をグローバルに捉え直す の商品スペック

商品仕様
出版社名:南江堂
著者名:田中千晶(著)/渡辺哲司(著)/武藤芳照(著)
発行年月日:2025/12
ISBN-10:4524273735
ISBN-13:9784524273737
判型:規小
発売社名:南江堂
対象:専門
発行形態:単行本
内容:医学・薬学・歯学
言語:日本語
ページ数:144ページ
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