燃えるキリン-乱調泰西美術史初学篇 [単行本]

燃えるキリン-乱調泰西美術史初学篇 [単行本] の 商品概要

• 目次

  作品篇　　新年　 7
  　　　　　春　　13
  　　　　　夏　　41
  　　　　　秋　　83
  　　　　　冬　　123
  
  注釈篇　　新年　142
  　　　　　春　　144
  　　　　　夏　　155
  　　　　　秋　　171
  　　　　　冬　　184
  
  　　人名等索引　192
  　　あとがき　98

• 出版社からのコメント

  西洋美術が俳句になった！　「美は人を沈黙させる」が、沈黙の中には無数の言葉がざわめいている－－一読三嘆、瞠目の新句集

• 内容紹介

  西洋美術が俳句になった！　「美は人を沈黙させる」が、沈黙の中には無数の言葉がざわめいている－－句を読んで楽しく、推理して楽しく、注釈を見てまた楽しい、一読三嘆、瞠目の新句集。
  
  星月夜ヴァン・アレン帯磁気嵐
  マリヽンの逆さまつ毛や曼殊沙華
  静物は甘い死の比喩 セザンヌの林檎かなしむ
  女人微笑むかつて火柱すでに霧
  地球史の涯の秋なりキリン燃ゆ（本書秋の部より5句）
  
  　俳句という「天來の獨樂」、すなわち思いがけなく入手した私の玩具の新展開である。むろん「遊び」だ。だが、「真剣な遊び」である。俳諧の根底に「遊び」があるのは周知のことだが、そもそも、ホイジンガのいうホモ・ルーデンス（遊ぶ人）たる人間の文化は「遊び」から生れるのだ。
  　遊びにはルールが必要だ。ルールは二つ。
  　一つ、有季定型とすること。
  　二つ、作品や作家を示唆するヒントを必ず入れること。
  　有季にすることで泰西の文化と日本の文化が接触し、接触しつつ共存することで、互いが自分の許容度を少し拡張し、逆に相手を少し異質化するだろう。
  　美術作品はあくまでモチーフなので、句は必ずしも対象を描写する必要はなく、発想を自由に飛ばしてもよい。ただし、野放しの自由は独り善がりになる。独り善がりじゃ遊びにならない。だから二つ目の縛りを加えた。鷹を訓練する際に鷹が飛び去ってしまわないように足に結びつける「綜緒」（柳田国男「桃太郎の誕生」）みたいなものである。想像力の勝手な飛翔を自分で抑制するのだ。
  　句集には注釈をつけて、作品篇と膨大な注釈篇の二部仕立てにする。モデルは若いころ読んだ入沢康夫の詩集『わが出雲・わが鎮魂』。句集としては異例のものになるだろう。（本書「あとがき」より）

• 著者について

  井口時男 (イグチトキオ)
  文芸批評家、俳人。1953年、新潟県生れ。1977年、東北大学文学部卒。神奈川県の高校教員を経て1990年から東京工業大学の教員。2011年3月、東京工業大学大学院教授を退職。1983年「物語の身体―中上健次論」で「群像」新人文学賞評論部門受賞。以後、文芸批評家として活動。2011年ごろからは句作にも本格的に取り組む。文芸批評の著書に、『物語論／破局論』（1987年）、『悪文の初志』（1993年／第22回平林たい子文学賞受賞）、『柳田国男と近代文学』（1996年／第八回伊藤整文学賞受賞）、『批評の誕生／批評の死』（2001年）、『危機と闘争―大江健三郎と中上健次』（2004年）、『暴力的な現在』（2006年）、『少年殺人者考』（2011年）、『蓮田善明―戦争と文学』（2019年／芸術選奨文部科学大臣賞受賞）、『井口時男批評集成』（2025年）、『近代俳句の初志』（2025年）など。句集に『天來の獨樂』（2015年）、『をどり字』（2018年）、『その前夜』（2022年／第78回現代俳句協会賞）がある。

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