文法の魔法-なぜ文豪の言葉たちは心に刺さるのか [単行本]
    • 文法の魔法-なぜ文豪の言葉たちは心に刺さるのか [単行本]

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文法の魔法-なぜ文豪の言葉たちは心に刺さるのか [単行本]

北村浩子(著・文・その他)


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出版社:主婦と生活社
販売開始日: 2026/10/16
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文法の魔法-なぜ文豪の言葉たちは心に刺さるのか [単行本] の 商品概要

  • 目次

    まえがきに代えて
    〈親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている〉の〈で〉
    夏目漱石『坊っちゃん』

    〈大変親密になって了った〉の〈了った〉
    志賀直哉「赤西蠣太」

    〈蜜柑が凡そ五つ六つ〉の〈が〉
    芥川龍之介「蜜柑」

    〈国境の長いトンネルを抜けると〉の〈と〉
    川端康成『雪国』

    〈あの隔てのない語調で〉の〈あの〉
    中島敦『山月記』

    〈もうダメなんです〉の〈んです〉
    太宰治『人間失格』

    〈わたしは、夫をどうしても欲しいのです〉の〈を〉
    松本清張「地方紙を買う女」

    〈いつの時代でも同じの筈〉の〈の〉
    筒井康隆『家族八景』

    〈いいもの好きで、ないものねだりのところもありました〉の〈もの〉
    向田邦子「手袋をさがす」

    〈これは今となってはよくわからない〉の〈わからない〉
    村上春樹「午後の最後の芝生」

    〈それを辛がって訴える男〉の〈辛がって〉
    田辺聖子「お茶が熱くてのめません」

    〈生きるかなしみ〉と〈生きるかなしさ〉の違い
    山田太一「断念するということ」

    〈いっているその状態を「いく」と断定してしまう〉の〈いく〉
    山田詠美『快楽の動詞』

    〈僕に、新しい靴をプレゼントさせてほしい〉の〈させてほしい〉
    小川洋子「薬指の標本」

    〈すでにチェキの台紙に浮き上がり終えた面々〉の〈終えた〉
    長嶋有「祝福」

    〈アンタがあと10センチ身長高かったらホンマに好きになったかも〉の2つの〈た〉
    又吉直樹『第2図書係補佐』

    〈私は「治らなくては」と思いながら〉の〈なくては〉
    村田沙耶香『コンビニ人間』

    〈おいしい、と声に出した〉の〈に〉
    柚木麻子『BUTTER』 

    〈エドワード・ホッパーの絵に描かれた人たちのように見ている側は寂しさを感じた〉の二義性
    多和田葉子『研修生』

    なぜ譲治はそんなにも文法にこだわるのか
    谷崎潤一郎『痴人の愛』

    「使役」と「受身」と「使役受身」の微妙な関係
    三島由紀夫『三島由紀夫レター教室』

    万能の褒め言葉
    檀一雄『檀流クッキング』

    星野源は「箸」に「お」を付ける
    星野源「箸選びはつづく」

    そのたった1文字が人を追い込む
    映画『佐藤さんと佐藤さん』

    対談 谷口ジョイ×北村浩子「面倒くさいからこそ推したい文法」
  • 出版社からのコメント

    「親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている」の「で」にこめられた魔法とは? 文法から日本文学の名作を読み解く。
  • 内容紹介

    親譲りの無鉄砲で子供の時から損ばかりしている。

    書き出しが印象的な名作はたくさんあるが、夏目漱石の『坊っちゃん』もその1つ。にゅっと勢いよく突き出される、自己紹介的な冒頭のこの一文を記憶している方も多いだろう。ところで、〈親譲りの無鉄砲で〉の〈で〉について、考えたことのある方はいらっしゃるだろうか。この〈で〉が、実は文章の魅力を担っていると言ったら不思議に思われるだろうか。

    〈無鉄砲〉は、品詞で言うと形容動詞だ。「形容動詞+で」となる時は「原因・理由」または「並列」を表すことが多い。たとえば、
     
    *仕事が大変で、今日は飲みに行けない。 ⇒ 原因・理由
    *積極的で明るい人を採用したい。 ⇒ 並列

    並列の場合は、前後の言葉のニュアンスを揃えたほうが自然に感じられる。

    *あの店はにぎやか(ポジティブ)で味もいい(ポジティブ)。 ⇒ 自然
    *あの店は不親切(ネガティブ)で料理もまずい。(ネガティブ)。 ⇒ 自然
    *あの店は不便(ネガティブ)で安い(ポジティブ)。 ⇒ 不自然 

    こんな文も作ることができる。

    *佐藤さんは勉強熱心で立派だ。

    この「で」は「原因・理由」「並列」の2つのうち、どちらの意味を表しているのだろう? 「勉強熱心」も「立派」もポジティブなニュアンスがあるので、並列ともとれる。また「勉強熱心だから立派だ」と、理由を述べているともとれる。つまり「で」は、1つで、2つの意味を表すこともできるのだ。

    親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。

    この文はまさに「1つの言葉(厳密に言えば1つの活用)で2つの意味」が感じられる文だ。「無鉄砲だから損ばかりしている」とも解釈できるし「無鉄砲かつ損ばかりしている」とも読める。どちらかと言えば前者の意味合いが強いとは思うが、「無鉄砲」も「損」もネガティブなイメージの言葉なので、並列と捉えてもおかしくはない。この文のあとには「無鉄砲さ」ゆえに損をしたようなエピソードが書かれているけれど、よく読むと家庭環境に恵まれなかった不遇さが「損」の根幹にも思える。「親譲りの無鉄砲のため」とか「無鉄砲が災いして」に変えてしまうとリズムが崩れる。〈無鉄砲で〉の〈で〉によって、この一文には期せずして快さと広がりが生まれているのだ。
     
    そう考えてみると、少しばかり面白さを感じるのではないだろうか。漱石はただ自然に書いただけなのかもしれないが、こうやって拡大してみると、なにげなく使っている言葉の中に、ちょっとした秘密が隠れているような気がしないだろうか。

    母語話者にとって文法とは「知らずに会得し自分の中で育てた膨大なルール」だ。そのルールに着目し深掘りしてゆくと、謎解きをするようなワクワク感が潜んでいるのが分かる。知っている人の知らない顔を見たような気持ちになれる。文法のスリリングさをここから探検してゆきたい。
  • 著者について

    北村浩子 (キタムラヒロコ)
    日本語教師、ブックレビュアー、アナウンサー。FMヨコハマにて20年以上ニュースを担当し、本の紹介番組「books A to Z」では2000以上の作品を取り上げた。現在は日本語教師を務めながら、雑誌などでブックレビューを発表している。著書に『日本語教師、外国人に日本語を学ぶ』(小学館新書)などがある。

文法の魔法-なぜ文豪の言葉たちは心に刺さるのか [単行本] の商品スペック

商品仕様
出版社名:主婦と生活社
著者名:北村浩子(著・文・その他)
発行年月日:2026/10/16
ISBN-13:9784391168143
判型:46判
対象:一般
発行形態:単行本
内容:文学総記
言語:日本語
ページ数:240ページ
縦:19cm
横:13cm
厚さ:1cm
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