血染の袍(1)(クロスフォリオ出版) [電子書籍]
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血染の袍(1)(クロスフォリオ出版) [電子書籍]

墨野恒一(著者)
価格:¥858(税込)
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出版社:クロスフォリオ出版
公開日: 2026年05月29日
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血染の袍(1)(クロスフォリオ出版) [電子書籍] の 商品概要

  • 彼はいつも、一着の古びた袍を身にまとっていた。

    それは、とうに亡くなった一人の女が、生前、その手で縫い上げたものだという。

    遠い昔――

    女は瀕死の彼を背負い、血に濡れた山道を、一歩、また一歩と進んでいた。
    その身から流れ出る血は、すでに尽きようとしていた。

    顔は紙のように白く、息も絶え絶えであった。

    それでも彼女は、不思議なほど穏やかな顔で、彼にこう告げた。

    「少し……疲れましたね」

    それが、彼女の最期の言葉となった。

    以来、彼はその袍を決して手放さなかった。

    破れれば繕い、
    繕えば、また破れた。

    幾度となく針を通し、継ぎ布を重ね、
    そうして彼は、百年もの歳月、その袍をまとい続けた。

    彼の傍らには、いつも一匹の猫がいた。

    だが、その獣を果たして猫と呼んでよいものか、誰にもわからない。

    姿かたちは、確かに猫に見える。

    されど――

    この世に、三千年もの時を生きる「猫」など、あろうはずもない。

    彼は、多くの人を殺してきた。

    その数を知る者は、もはやどこにもいない。

    ただ袖をひと振りするだけで、
    人の頭は、石畳に叩きつけられた西瓜のごとく、たちまち砕け散ったという。

    死者は、あまりにも多かった。

    その名を聞けば、人々は戸を閉ざし、
    泣く子さえ、たちまち声を潜めた。

    彼を恐れる者たちは、ひそかにこう呼んだ。

    ――悪鬼、と。

    だが、彼が求めていたものは、不老長生ではなかった。

    仙籍に名を連ねることでも、

    天地を意のままにする神通力でもない。

    彼が願ったのは、ただ一つ。

    ただ一度きりの成仙の機縁と引き換えに、

    あの日、血を流し尽くして死んだ女を――

    再び、この人の世へ呼び戻すことだった。

血染の袍(1)(クロスフォリオ出版) [電子書籍] の商品スペック

シリーズ名 血染の袍
出版社名 クロスフォリオ出版
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著者名 墨野恒一
著述名 著者

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