仕舞屋の灯と申します。渡し守は四十年、川に呑まれた子らの名を、誰にも言わず杭に刻み続けていました(Realize出版) [電子書籍]
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仕舞屋の灯と申します。渡し守は四十年、川に呑まれた子らの名を、誰にも言わず杭に刻み続けていました(Realize出版) [電子書籍]

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出版社:Realize出版
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仕舞屋の灯と申します。渡し守は四十年、川に呑まれた子らの名を、誰にも言わず杭に刻み続けていました(Realize出版) の 商品概要

  • 提灯屋・幸助が遺した、地味な一張りの提灯。暮れの日ざしに透かすと、無地に見えた火袋の内側に、薄墨で描かれた絵がひとりでに浮かびあがる。火を入れた者にだけ見える、息子の幼い日の姿だった。火袋張りをやめて商人になったのを死ぬまで見下されたと拒んでいた直次郎が、自分の手で火を入れ、浮かんだ絵を見て一人で泣く。
    元紺屋の後家・お篠が、妹のお六のために産着の型に染めた一反の布。生涯の詫びの品だと読んだ灯は、それを差し出す。だがお六は静かに明かす。三十年前、姉は自分の産んだ子を産後の病の間に、家の名を守るためと里子に出し、行方も知れなくした、と。詫びの布ひとつで許せるものかと、お六は受け取らずに去る。読みが正しくとも、直せぬものはある。灯は押し付けず、布を引きとる。
    三軒目は、上の渡しの渡し守を四十年つとめて逝った徳市の家だった。弟の死んだ渡しの渡し守だと気づいて、灯は胸を突かれる。川の道具ばかりを大事にした冷たい人だと読み違え、息子の平吉を傷つけた灯は、帳面を丹念に読みなおす。徳市は三十年前、川へ落ちかけた平吉を境に、頑なに息子を川から遠ざけていた。あの冷たさは、水から子を守るためだった。そして寒の水の引いた渡しに立った灯は、水面下の古い杭の根に、徳市が四十年かけて一人ずつ刻んだ、川に呑まれた子らの名の列を見つける。そのなかには、弟の巳之吉の名まで刻まれていた。
    灯は棚の色あせた風車を手に、弟の名の刻まれた杭のもとへ立つ。十四年ぶりに、それを川へ流そうと水面へ差し出す。羽根を寒の水にひたし、流れに半回りして回るのを見る。けれど指はどうしても掌をひらけない。濡れた風車を握りなおして持ち帰り、それでも暗い箱へは戻さず、また棚へ立てる。掌に残る、寒の川水の冷たさと、濡れた風車の重み。
    本作は「仕舞屋の灯」シリーズ第4巻(全4巻・完結)。

仕舞屋の灯と申します。渡し守は四十年、川に呑まれた子らの名を、誰にも言わず杭に刻み続けていました(Realize出版) の商品スペック

シリーズ名 仕舞屋の灯
出版社名 Realize出版
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著者名 時津なぎさ
著述名 著者

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