灯を捨てた人と呼ばれた荷役ですが、港で九口の荷を担ぎつづけたら、灯台を継いだ弟が八年、毎晩刻の三分前に灯を回してくれます(Realize出版) [電子書籍]
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灯を捨てた人と呼ばれた荷役ですが、港で九口の荷を担ぎつづけたら、灯台を継いだ弟が八年、毎晩刻の三分前に灯を回してくれます(Realize出版) [電子書籍]

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出版社:Realize出版
公開日時:2026年08月19日00:00:00からお読みいただけます。
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灯を捨てた人と呼ばれた荷役ですが、港で九口の荷を担ぎつづけたら、灯台を継いだ弟が八年、毎晩刻の三分前に灯を回してくれます(Realize出版) の 商品概要

  • 入江の奥に石を積んだだけの粗末な港がある。突堤は二本あるが、北の一本は先が崩れたまま四年放ってあるので、船は南にしか着けない。朝、帳場の割り板に名と数が並ぶ。大鷹きよ、一。苫米地樹、九。八年、その並びは動いていない。
    苫米地樹、三十一。八年前の冬、先代の灯台守を焼いた三日あとの晩に、岬の突端から下りて、それきり坂を上がっていない。岩の上で、誰にも聞こえない声で、二度とあの灯には触らないと自分に言った。聞いた者がいない誓いほど、外しにくいものはない。港では数しか言わない。数を言えば話が終わるからだった。
    村では樹を「灯を捨てた人」と呼ぶ。最初にそう呼んだのは網元のきよで、三日で村じゅうに広まり、半年で子どもまで覚えた。樹は一度も言い返していない。
    晩夏の昼過ぎ、巡視官が港へ来る。この冬いっぱい、人の手で回す灯と、機械で回す灯を並べて較べる。十一月の朔から二月の晦日まで、毎晩。無灯の夜が一晩でもあれば、春に灯は機械へ替わり、灯台守の職は残らない。
    その日の夕方、苫米地岬が八年ぶりに港へ下りてくる。血の繋がらない弟で、二十で灯台を継ぎ、いま二十八になっている。冬の夜は十四時間を越える。灯芯は二刻に一度切らないと煤が伸びる。一人では通しで持たせられない。先代の点け方を体で覚えているのは兄さんだけです、と岬は言う。
    樹は断る。断られた相手は、今冬の割りだけを口で言い置いて帰る。十一月は四時五十分。十二月は四時三十七分。点けはじめは、どの月も刻の三分前。兄さんが港からでも見えるところに、毎晩、刻の三分前から。八年、一晩も落としていません。
    霧の匂い。芯を二分下げて、錘を一分緩める。誰の物か港の誰も知らない羅紗の外套。二十二年前の十一月の三晩。そして、機械室に誰も何も言わないまま増えていく、樹の背丈に合わせた棚と、寸法の合う手袋と、外套を掛けるための新しい釘が一本。
    北の浜から雇われてきた十九と十七の兄弟。港に立ちはじめる、兄は灯台の権利を取りに戻ったのだという噂。
    灯には触らない、切り方を見せるだけだ。自分の誓いに抜け道を作った男が、暴風で機械の止まった夜に何をするか。
    百二十晩。人手の列、無灯なし。BL時代小説・全10章完結。

灯を捨てた人と呼ばれた荷役ですが、港で九口の荷を担ぎつづけたら、灯台を継いだ弟が八年、毎晩刻の三分前に灯を回してくれます(Realize出版) の商品スペック

出版社名 Realize出版
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著者名 芳賀まほろ
著述名 著者

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