紙漉き十市(四) 領の記録所に紙を売ってもらえませんでしたが、百年もつ厚紙を漉いたら、書庫の写し役が毎回、自分の銭で紙を選んでくれます(Realize出版) [電子書籍]
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紙漉き十市(四) 領の記録所に紙を売ってもらえませんでしたが、百年もつ厚紙を漉いたら、書庫の写し役が毎回、自分の銭で紙を選んでくれます(Realize出版) [電子書籍]

価格:¥913(税込)
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出版社:Realize出版
公開日時:2026年08月21日00:00:00からお読みいただけます。
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紙漉き十市(四) 領の記録所に紙を売ってもらえませんでしたが、百年もつ厚紙を漉いたら、書庫の写し役が毎回、自分の銭で紙を選んでくれます(Realize出版) の 商品概要

  • 領の公の帳と証文と郷帳に用いる紙は、記録所の定めた紙に限る。外より入れたる紙、これを用ゐるべからず。城下の記録所の門前には、その触書が下がっている。
    須賀十市、三十。宇津木千枝、二十七。三太と三人で城下へ入り、まず記録所の紙を十枚だけ買った。八十文。宿の二階で棹秤に掛けると、今年の紙は十枚で二十五匁。五年前のものが三十五匁、十年前のものが五十匁ある。値は動いていない。薄くなっているのは紙のほうで、しかもそれは、一年ごとにきれいな直線を描いていた。
    写し役の真木佐保、二十六。十八の年から記録所の書庫を預かっている。北向きの土蔵の下段に積まれた古い綴りは、指を当てるとその場で粉になった。筆頭の沓掛頼母は湿気のせいだと言う。十市はその粉を摘まんで、灰汁で溶けた繊維の匂いを嗅ぐ。煮すぎと叩きすぎ。もとの紙が薄いのではない。もとの紙は、そもそももたないように作られている。
    菅井川端に、屋根の落ちた深山屋の空き小屋があった。月に五百文。屋根を葺き、簀屋の老人に簀を頼み、十日かけて最初の一枚を漉く。十枚で百匁。記録所の紙のちょうど四倍である。
    十市は「覚」を一枚書いて記録所へ出す。中判厚手、一枚十二文、文月の晦日までに二千四百枚納む。受け取りは保留とする、秋の評定を待て、と沓掛は言った。翌る日から記録所は十市に紙を売らなくなり、城下の紙屋も四軒が離れた。それでも十市は言う。──待ちません。日はこちらで切ります。
    名主の家へ紙を置いてくる。河原の子どもらに漉き返しを教える。灰色の再生紙が「下写し」に使えると気づいたのは、記録所の内側の者だった。やがて写し役たちは、自分の給金から自分の使う紙を選んで買いはじめる。買い入れのたびに棹に掛けて量る、という習いも、そこから生まれた。
    水無月の末から長雨が続き、書庫の下段十八綴りが崩れる。触った者の責めにされかけたその日、十市は十一束の写しを式台へ運び入れ、四十一年前の紙と、二十五年前の紙と、今年の紙を、順に棹へ掛けた。
    値の欄しかなかった帳面に、目方の欄がもう一つ増えるまでの九か月。
    【紙漉き十市 全十巻】一~四巻=村と領内/五~七巻=都と国/八~十巻=国の外。本巻は第一部の四冊目、第一部の締めくくりです。

紙漉き十市(四) 領の記録所に紙を売ってもらえませんでしたが、百年もつ厚紙を漉いたら、書庫の写し役が毎回、自分の銭で紙を選んでくれます(Realize出版) の商品スペック

シリーズ名 紙漉き十市
出版社名 Realize出版
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著者名 帆足いさな
著述名 著者

    Realize出版 紙漉き十市(四) 領の記録所に紙を売ってもらえませんでしたが、百年もつ厚紙を漉いたら、書庫の写し役が毎回、自分の銭で紙を選んでくれます(Realize出版) [電子書籍] に関するレビューとQ&A

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