紙漉き十市(六) 都の座に値を八文から六文へ下げられましたが、四つ辻に値の札を立てたら、手習い所の師匠が毎月同じ日に十三帖を頼みに来ます(Realize出版) [電子書籍]
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紙漉き十市(六) 都の座に値を八文から六文へ下げられましたが、四つ辻に値の札を立てたら、手習い所の師匠が毎月同じ日に十三帖を頼みに来ます(Realize出版) [電子書籍]

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紙漉き十市(六) 都の座に値を八文から六文へ下げられましたが、四つ辻に値の札を立てたら、手習い所の師匠が毎月同じ日に十三帖を頼みに来ます(Realize出版) の 商品概要

  • 都の音は、峠を下りきるよりずっと前から聞こえていた。七年ぶりである。名を消された場所へ、十市は千枝と二人で戻ってきた。
    紙座の漉き場の入口に柱が立ち、板が下がっている。書いてある数は十六。明六つに座の帳付けが書き、書いたらその日はもう動かない。決めるのは座主である。そして座が漉き手から買う値は、七年前の八文が六文になっていた。都の紙が高くなったのではない。都の紙が安く買われるようになったのでもない。十六と六のあいだの十が、七年かけて広がっただけである。
    須賀十市、三十二。宇津木千枝、二十九。千枝の帳には五年ぶん、値の行だけが白いままになっている。都へ入った晩、千枝は十市に訊いた。三十日は待てますか。
    三条坊徳右衛門、六十三。座主は十市を座敷へ呼び、名を漉き手帳へ戻してもよいと言う。ただし値の根拠は語らない。年が明けてから、とだけ言う。
    十市は柳ノ渡しの東岸の廃屋に舟を据え直した。楮を煮て、叩いて、漉く。杉の板に墨で書いた値は、一帖十二文。板を四つ辻の土へ刺す。札は、立てた本人がそこにいなくても値を言い続ける。人の口は聞かれてから答えるが、札は聞かれる前に答えている。答えたあとで引っ込めることもできない。
    座の触れで市を追われ、土塀の切れ目へ移った。それでも人は来る。手習い所の師匠は子供が三十二人、清書は月に二度、ひとりが四枚。毎月同じ日に十三帖。絵草紙の板元が来て、寺の玄栄が来て、湯屋の女が来た。雪の晩には、座の下で漉いている男が浅瀬を渡って訪ねてくる。かつての同輩、布屋弥助、三十四。
    三十日を書き取るあいだ、十市は毎朝、舟の水を入れ替えつづけた。手間のわりに誰の目にも見えない仕事である。
    千枝が三十日ぶん都の値を書き取ると、そこに一つの癖が現れた。東から荷が着いた次の朝は、九回のうち九回とも値が下がっている。
    四つ辻に立つ札は、四十枚になり、五十三枚になった。
    十四年前、座主の家が焼けたとき、蔵の帳がたった一冊だけ焼け残っている。その一冊の裏打ちに使われていた紙を、十八の十市は覚えていない。
    一つしかなかった都の値が、札の数だけばらばらになるまでの一年。
    【紙漉き十市 全十巻】一~四巻=村と領内/五~七巻=都と国/八~十巻=国の外。本巻は第二部の二冊目です。

紙漉き十市(六) 都の座に値を八文から六文へ下げられましたが、四つ辻に値の札を立てたら、手習い所の師匠が毎月同じ日に十三帖を頼みに来ます(Realize出版) の商品スペック

シリーズ名 紙漉き十市
出版社名 Realize出版
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著者名 帆足いさな
著述名 著者

    Realize出版 紙漉き十市(六) 都の座に値を八文から六文へ下げられましたが、四つ辻に値の札を立てたら、手習い所の師匠が毎月同じ日に十三帖を頼みに来ます(Realize出版) [電子書籍] に関するレビューとQ&A

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