紙漉き十市(八) 国境の関で荷を三月も止められましたが、潮の水で反らぬ紙を漉いたら、関の荷方が朝と晩、値の札を読みに坂を上がってきます(Realize出版) [電子書籍]
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紙漉き十市(八) 国境の関で荷を三月も止められましたが、潮の水で反らぬ紙を漉いたら、関の荷方が朝と晩、値の札を読みに坂を上がってきます(Realize出版) [電子書籍]

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紙漉き十市(八) 国境の関で荷を三月も止められましたが、潮の水で反らぬ紙を漉いたら、関の荷方が朝と晩、値の札を読みに坂を上がってきます(Realize出版) の 商品概要

  • 国境の鵜坂の関で、紙の荷が三月止まっている。
    止めているのは関の紙役・辻堂主水。一番が一帖三十文、二番が二十四文、三番が十八文、四番が十二文、五番が八文。中の紙が突然「一番」に改められ、一番の値では向こうの国の店が首を横に振る。改められた荷はそのまま戻されて、坂の下には戻り荷の山ができていた。
    須賀十市、三十四。宇津木千枝、三十一。負い籠に帳面と墨と筆、それに油紙で包んだ紙が十帖。二十里を歩いてきた。
    塩ノ津の湊で、隣国の紙商・呉葉、三十五と出会う。潮屋の蔵に積まれた本国の紙は、十日で片側だけ反っていた。蔵の窓から入る風が、片面だけを先に乾かすからである。隣国の楮は海の近くで育つので繊維が短く、薄い紙にしかならない。だから本国の紙が要る。要るのに、反る。
    裏の漉き場は三年空いていた。井戸の水には潮が混じっている。硬い水である。硬い水で漉くと繊維の締まりが早く、そのかわり目が詰まる。柄杓の水の量と、桁を振る回数を、十市は一つずつ直していく。
    板に貼らず、二枚を背中合わせにして風だけで乾かす。合わせ干し。三千枚、百五十帖、五駄。十日置いても反らなかった。
    荷札に等級は書かない。書くのは、漉いた場所と、漉いた者の名と、値だけである。関はそれを受け取らなかった。等級の無い荷は改められぬ。改められぬ荷は通らぬ。十市は三日、荷を並べて関の前に立ちつづけ、四日目に引き上げる。四日目も立つと、立つことのほうが仕事になってしまうからだった。
    千枝が突き合わせたのは、峠下の会所にある二冊の見合わせ帳である。両国が別々に付けている。同じ荷の同じ月で、三年ぶん七十二貫の食い違いが出た。「中」と「三番」という呼び名が、二冊のあいだで一つずつずれていたせいだった。
    三太は関の下と炭焼き小屋のあいだを、一日に一往復半する道を組んだ。関を通らずに荷を運ぶ道である。呉葉は買い手を探し、千枝は荷の傷みの深い順を数えた。誰も、関が開くのを待っていない。
    やがて関が閉まる。紙も塩も干魚も竹も止まる。十市は関の外の無主地に、丸太八本と菰の壁で仮の蔵を建てはじめる。
    国境で紙が、等級ではなく値で通るようになるまでの一年。
    【紙漉き十市 全十巻】一~四巻=村と領内/五~七巻=都と国/八~十巻=国の外。本巻から第三部に入ります。

紙漉き十市(八) 国境の関で荷を三月も止められましたが、潮の水で反らぬ紙を漉いたら、関の荷方が朝と晩、値の札を読みに坂を上がってきます(Realize出版) の商品スペック

シリーズ名 紙漉き十市
出版社名 Realize出版
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著者名 帆足いさな
著述名 著者

    Realize出版 紙漉き十市(八) 国境の関で荷を三月も止められましたが、潮の水で反らぬ紙を漉いたら、関の荷方が朝と晩、値の札を読みに坂を上がってきます(Realize出版) [電子書籍] に関するレビューとQ&A

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