紙漉き十市(九) 評定を経ねば蔵は見せられぬと言われましたが、山の水を引いて崩れぬ紙を漉いたら、写し役が五日ごとに写した冊を積んでくれます(Realize出版) [電子書籍]
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紙漉き十市(九) 評定を経ねば蔵は見せられぬと言われましたが、山の水を引いて崩れぬ紙を漉いたら、写し役が五日ごとに写した冊を積んでくれます(Realize出版) [電子書籍]

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出版社:Realize出版
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紙漉き十市(九) 評定を経ねば蔵は見せられぬと言われましたが、山の水を引いて崩れぬ紙を漉いたら、写し役が五日ごとに写した冊を積んでくれます(Realize出版) の 商品概要

  • 十九日かけて海を渡った。
    大陸の湊、白沙。東の蔵に積荷帳が二百二十冊ある。開いて読めるのは、そのうちの一冊だけだった。あとは指を当てると裂ける。裂け口を見ると、繊維が絡んでいない。
    須賀十市、三十五。宇津木千枝、三十二。三太と、隣国の紙商・呉葉が一緒である。
    興州の総記録所には、蔵が七棟ある。目録役の白鷺玄蕃、五十八。三年前の夏から、こちらの目録も同じように崩れはじめた。千枝が数えると、七棟で千二百冊。読めるのは六百冊。いま写しはじめても千日かかる。しかも崩れていく速さのほうが、写していく速さより速い。
    そのうえ蔵を見るにも手続きが要る。評定を経ませんと、総記録所の蔵はお見せできませぬ。評定はいつだ。月に二度でございます。
    十市が最初にしたのは、紙を漉くことではなく、蔵の庇の板を外すことだった。風の道を作るためである。板は二十一枚。許しが出るまでに五日かかった。それだけで崩れは一日五百枚から三百枚に落ちる。まだ追いつかない。
    次に、水を替えた。漉き場から六町のぼった岩の割れ目に、冷たい水が出ている。煮ても白い垢のつかない水だった。竹の樋を六町引く。水が変われば繊維が絡む。灰汁抜きも、村の十日ぶんがここでは五日で足りた。溜め漉きを流し漉きに替えると、一舟が百枚から百五十枚になり、四舟で一日六百枚になる。
    ところが紙は売れずに積み上がった。使う側が値のところで止まっている。役所は紙の値を十六と定めようとしていた。漉き手の賃が出ない値である。
    紙を漉くことよりも、写す手を増やすことのほうが難しい。役人を写しに回し、庇の下と廊下に机を出し、写し役は百八人になった。一日千八十枚。崩れは一日八十枚まで落ちる。写しが崩れを追い越したのは、その日だった。手習いの子らは大根や竹の輪切りで印を作り、自分の写した頁に押しはじめる。
    白沙の東の蔵では、康六という老いた書役が、誰にも言われないまま自分の手で写しはじめていた。十市はその名を、村を出るときから持っている薄い帳の新しい頁に書きつける。何の名か、どういう者かは書かない。日付だけを横に入れる。
    断るという役目を、自分の手から誰かへ渡してしまうまでの一年。
    【紙漉き十市 全十巻】一~四巻=村と領内/五~七巻=都と国/八~十巻=国の外。本巻は第三部の二冊目です。

紙漉き十市(九) 評定を経ねば蔵は見せられぬと言われましたが、山の水を引いて崩れぬ紙を漉いたら、写し役が五日ごとに写した冊を積んでくれます(Realize出版) の商品スペック

シリーズ名 紙漉き十市
出版社名 Realize出版
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著者名 帆足いさな
著述名 著者

    Realize出版 紙漉き十市(九) 評定を経ねば蔵は見せられぬと言われましたが、山の水を引いて崩れぬ紙を漉いたら、写し役が五日ごとに写した冊を積んでくれます(Realize出版) [電子書籍] に関するレビューとQ&A

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