立ち退きを言い渡された辻の櫛売りですが、筵をやめて台にしたら、行商の小間物屋が三年いつもの刻に天気を教えていってくれます(Realize出版) [電子書籍]
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立ち退きを言い渡された辻の櫛売りですが、筵をやめて台にしたら、行商の小間物屋が三年いつもの刻に天気を教えていってくれます(Realize出版) [電子書籍]

価格:¥913(税込)
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出版社:Realize出版
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立ち退きを言い渡された辻の櫛売りですが、筵をやめて台にしたら、行商の小間物屋が三年いつもの刻に天気を教えていってくれます(Realize出版) の 商品概要

  • 「櫛はござい、元結はござい! 歯の折れた櫛も、こちらへお預けくださればひと晩で歯が生えて戻りますよ」--生えて戻らねば銭は取らない。歯直しが一本十六文、元結が一結び四文、直した櫛が一本二十八文。朝五つから夕七つまで辻に立って、一日の上がりが百五十文である。
    淡路すず、二十八。十九で櫛の歯直しと元結の縒りを覚え、はじめの六年は家の中で縒っていた。縒っていても名が出ないので表へ出た。町の北の口の三つ辻、北東の隅に六尺四方の筵を二枚。筵の東の端から溝の芯まで二間半、歩いて六歩。三年、雨の日も休まず立っている。鑑札は持っていない。
    晩春、小間物仲間の申し合わせで「鑑札これなき者の商いを町内にて認めず」と言い渡された。株が二十四ある仲間の十九人が集まって、十七人が締め出しに賛成した。夏には高札が出て、筵・菰の類を敷くことも止められる。すずは筵をやめ、二尺四寸の背負い箱を縦に立てて板を渡した。並べられる櫛は三十六本から十四本に減り、上がりは百六文まで落ちた。
    返された櫛の歯は、炭火に三つ数えるあいだ翳して木賊で撫でれば先が丸くなる。紅が浮いた紅皿は十九枚、五十文の十九で九百五十文。洗った水を溜めて沈んだ紅をすくい、素焼きを窯代三十二文で焼き直して、五度だった刷きを七度にする。棒の先へ赤い元結を三つ吊るせば、二十間手前から見える。
    都築伊三、五十一。十六から三十五年、天秤棒と背負い箱で十二の村を回っている。市の日を外さないので日和の伊三と呼ばれる。四つの村の市は三十五年で千六百八十度あって、外したのは二度きりだという。この男は毎日この辻を通り、いつもの刻に、いつもの向きから来て、まず空の話をする。針を百十九本道にこぼした日には二人で膝をついて拾い、底の割れた背負い箱には母の帯芯が二枚、木目を交わらせて貼られた。
    仲間の株は六年動いていない。年行事は四人揃わねば何も改まらず、その席に伊三が一つ据わっている。目こぼしは、その席と引き換えのものだった。膝が落ちて下りに倍かかるようになった男の回り先を、すずは辻の客の口から聞き集め、四半刻を一と数えて丸十二の紙に組み直す。字が書けないので、丸の中に描くのは松と橋と堂の屋根である。「日和は、あんたが持ってな」--初春から翌る年の二月まで、辻の四方をひたすら数えつづける一年。時代ライト文芸・全10章完結。

立ち退きを言い渡された辻の櫛売りですが、筵をやめて台にしたら、行商の小間物屋が三年いつもの刻に天気を教えていってくれます(Realize出版) の商品スペック

出版社名 Realize出版
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著者名 望月とまり
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