はじめての雪山登山特集



雪山はまさに別世界。
一面の銀世界の中、静寂が支配する雪山登山は、喧騒の夏山とはまた違った山登りの醍醐味を味わうことができます。
雪山は様々な道具を駆使して歩く・登る楽しみというものがあり、例えばアイゼンを登山靴に装着してピッケルを持って斜面を登ったり、トレースの無い道をワカンを使って切り開いたり、スノーシューを装着して解放感のある雪原をハイキングしたり……。このように、雪山登山ならではの冒険感や達成感を味わえるのも魅力の一つです。
また、装備・経験・技術が伴ってくれば、稜線歩きを伴った縦走や、雪を利用したテント設営や雪洞を作ることだって可能になります。そういう点で言えば夏山以上に「自由」と言えます。
そして何より、雪山の織り成す景色というのは、言葉では言い表せないくらいの素晴らしさと感動を我々登山者に与えてくれるのです。
このページでは、雪山登山に興味がある方向けに基本的な装備や心構えを解説したものになります。ぜひ参考にして頂き、素晴らしき雪山登山の世界に足踏み入れてみて下さい。
雪山は夏山以上に天候・気象条件に左右されやすいです。
同じルートでも風が弱くて晴天の日と、風が強い日や吹雪いている日では、体感温度や体力の消耗具合、目的地までの所要時間がまるで違ってきます。
大雪で一夜にしてルートの状況ががらりと変わることもありますし、樹林帯と稜線の温度差や急な天候の変化も日常茶飯事です。
そんな厳しさの面も確かにある雪山登山において大事なことは、登る雪山の状況や難易度に応じてアイゼンやピッケル、各種防寒対策など雪山ギア・ウェアを抜かりなく準備して、無理のない登山計画を立てて、万全の体調で臨むことなのです。
はじめての方は、道具の使い方や雪山に対する知識のところで不安もあると思います。その場合は本ページを参照して頂く他にも、石井スポーツ各店の経験豊富なスタッフによるアドバイスや、石井スポーツアドベンチャーズ(登山学校)での各種講習を上手に活用して頂き、雪山登山を安心安全に楽しまれることをおすすめいたします。
→石井スポーツアドベンチャーズ(登山学校)HPはこちら

夏山以上にリスクマネジメントが重要

稜線と樹林帯では風の強さや寒さがまるで違う
まずは自分が、どのような時期(厳冬期や残雪期)にどのような雪山に登りたいのかをイメージしながら装備を選んでいくのがポイントです。
樹林帯中心の気象が穏やかな雪山ハイキングや雪原でのスノーシューハイクであれば、ピッケルよりもトレッキングポールが活躍しますし、夏山装備の一部(例えばレインウェア)も、天気や気温等に恵まれればという条件付きですがそのまま使える場合もあります(もちろん防寒対策をした上で着る事が前提です)
一方で森林限界を超えるような高山や稜線歩きを伴った本格的な雪山登山、より条件が厳しくなる厳冬期(1月~2月)を中心に様々な雪山に登りたいのであれば、ウィンターマウンテンブーツや10・12本爪アイゼン、ピッケル、ハードシェルジャケット、オーバーパンツ、バラクラバなどの雪山専用装備が必須となっていきます。
はじめのうちは、好天の日を狙って初級の雪山を無理のない範囲で経験していきながら、以下に掲載している雪山基本装備リストのアイテムを徐々に揃えていくようにするのがおすすめです。
そして雪山登山に慣れてきたら、ご自身が目標とする雪山や山行スタイルを意識した装備も追加していくと、活動範囲や活動時期を広げることが出来ます。
【参考】装備イメージ例
山行スタイル例 | 装備のイメージ例※ |
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雪原でスノシューハイク(初級) | 夏山登山装備に防寒着をプラス。濡れないようにレインウェアも必ず。登山靴や剛性の高い防寒ブーツ+スノーシュー+ダブルストック。 |
北横岳に日帰り登山(初級) | 6本爪以上のアイゼン+ダブルストック(念のためピッケルも)靴は出来れば雪山用登山靴を。標高が高いので防寒対策は万全に。 |
赤岳に厳冬期小屋泊(中級) | 雪山用登山靴+前爪付き(10・12本爪)アイゼン、ピッケルは必須。アプローチ用にチェーンスパイク(チェーンアイゼン)やワカンがあると尚良い。 |
アイスクライミング | 基本の雪山装備に、登攀専用装備(縦爪アイゼン、アイスアックス、ヘルメット、グローブ、クライミング道具)待機中寒いので防寒対策も。 |
残雪期登山(4月~5月) | アイゼン、ピッケルはまだまだ必要な場合も多い。登山靴は夏靴でも大丈夫になるがその場合は剛性の高いアイゼン対応の靴を選ぶこと。 |
※あくまでイメージです。この他にも装備は必要になりますし、時期や天候によっても必要装備は異なります。
雪山登山で使用する装備はどのようなものがあるのか、これから雪山装備を揃えていきたい方向けに、押さえておきたい基本の雪山ギアを簡単なポイント解説を交えてご紹介いたします。
※夏山登山と共通する装備は省略しております(例:地図やヘッドライト、ツェルトなど)
イメージ画像 | 装備名 | ポイント |
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雪山用登山靴 (冬靴) |
夏靴と違い保温材が封入されているので、氷点下の環境でも足が冷えにくく凍傷のリスクを軽減できる。またアイゼンの使用を想定した剛性の高いソールや前後にコバ(アイゼン装着のための溝)が付いているのも特徴。→ページ下部コラムでも解説。 |
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アイゼン (クランポン) |
雪や氷の上を滑らずに歩いたり登下降するために登山靴に装着する。爪の本数や装着方法等で種類が分かれるが、その山域に合った適切なアイゼンを選択したい。靴との相性もあるので、石井スポーツ店舗スタッフに相談してから決めると安心。→ページ下部コラムでも解説。 |
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ピッケル (アイスアックス) |
雪の斜面を登下降中の滑落停止や、歩行時のバランス保持のために杖として使う。長さや形状により使い勝手はやや異なる。状況によりトレッキングポールと使い分けるとより快適に歩ける。→ページ下部コラムでも解説。 |
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トレッキングポール | 雪上歩行は思ったより足を取られやすいため、歩行時のバランス保持という点において夏山以上に活躍する。平坦部や滑落の危険性が少ない緩斜面では、ピッケルを持って歩くよりもポールの方が長さがある分楽である。雪山で使用する場合は、先端のリング(バスケット)を大型のスノーバスケットに交換すること。 |
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スパッツ (ゲイター) |
雪が登山靴の中に入るのを防いだり、脚部の更なる防風・防寒のためにオーバーパンツの上から装着する。雪山で使うものはひざ下までのロングタイプで、アイゼンの爪を引っ掛けても破れにくい生地が厚手で丈夫なタイプを選ぶようにしたい。 |
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ワカン (わかんじき) |
深雪や軟雪では、いくらアイゼンを装着していても脚が沈んでしまい進むのに苦労するので、このワカンで踏み抜きながら進んでいく。初級の雪山でも、降雪直後や人けの少ないルートでは意外と使用する機会があるので用意しておくに越したことはない。→ページ下部コラムでも解説。 |
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スノーシュー | ワカン同様に深雪のルートを歩く場合に装着する。ワカンよりも大きいので更に浮力が得られるが、携行性や斜面の登り下りでの取り回しではワカンに分がある場合もある。スノーシューを登山で使いたい場合は、斜面の登り下りを想定した機能が付いているモデルを選ぼう。→ページ下部コラムでも解説。 |
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ザック |
容量が足りるのであれば、夏山で使用しているザックを使う事は出来る。ただし、外付けのポケットや各種バックルが少ないシンプルな形状の方が、雪が付着したり入り込んだりしないのでより雪山に向いていると言える。各種防寒アイテムやアイゼンなどで夏山よりも荷物は確実に増えるので、日帰りでも容量は30L以上が推奨される。 |
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サングラス | 強烈な紫外線が雪面から照り返してくる雪山では、目を守るアイウェアが必須。樹林帯や曇りなどの暗めの環境下でもそのまま使えるように、やや明るめのレンズで視認性に優れたモデルや、調光レンズ、レンズが交換できるタイプが使いやすい。 |
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ゴーグル | 強風や吹雪の時は、スキーやスノーボードなどで使うゴーグルで視界を確保しないと行動できなくなる恐れがある。特に稜線歩きがあるような雪山に行くなら必須と言えるので、出来ればサングラスと両方持っていくと安心である。なるべく顔にフィットして曇りにくいものを選びたい。 |
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ヘルメット | 滑落の危険があるような難所・稜線歩きや、上部からの落石、落氷の恐れがあるルートを歩く場合は安全のためにヘルメットを被る。被った際のフィット感やサイズ感(インナーキャップやバラクラバとの併用)、重量、使用素材(耐久性)等を確認しながら決めよう。 |
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保温ボトル | 雪山では体が冷えやすいので、休憩時に暖かい飲み物を直ぐに飲めるようにしておくとよい。日帰りならバーナーが無くても、出発前に保温ボトルに暖かい飲み物を入れていくだけで十分対応できる。グローブをしたままでも操作しやすくて、軽くて保温性に優れたモデルを選ぶようにしたい。 |
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バーナー | 現地でお湯を沸かしたり調理が出来る装備があると精神的にも余裕が生まれる。手軽に使うなら火力調整が容易で扱いやすいガスバーナーがおすすめ。パーティーで共同装備としてもよい。 ガスバーナーの注意点としては、使用するガスカートリッジは氷点下でも火力を維持できる寒冷地対応のものを選ぶこと。 |
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ココヘリ | 「発信機(会員証)を利用した会員制捜索ヘリサービス」で、発信機を身に着けておくともしもの時に受信機を搭載したヘリコプターが出動。位置情報を消防や警察などに連絡し確実な救助に繋げるというもの。 雪山に限った話ではないが、山に入るならぜひとも身に付けたいアイテムである。→ページ下部コラムでも解説。 ▶石井スポーツココヘリ特設ページから申し込むと入会金が¥1,000お得。 |
続いて、ウェア類の雪山基本装備のご紹介。ウェアリングの基本的な考え方は無雪期と同じで、レイヤリング(アウター+ミドルレイヤー+ベースレイヤーを重ね着)をして、状況に応じて着脱をしながら調整していきます。
イメージ画像 | 装備名 | ポイント |
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アウターシェル (アウター) |
レイヤリングの一番外側で、吹き付ける風や雪から体を守り濡れないようにするためのアウタージャケット。ハードシェルと呼ばれる雪山向けのタイプは、雪の侵入を防ぐためフードが大きかったり、強靭な生地を使いながらも軽さや透湿性も両立している。低山の雪山なら気象条件に恵まれればレインウェアをそのまま使うことも出来るが、本格的な雪山登山なら耐寒・耐久性の面からもハードシェルを選びたい。 |
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オーバーパンツ (アウター) |
一番外側に履く、防風・防水のハードシェルパンツ。夏向けのレインパンツよりも生地が厚めで強靭な作りになっている他、靴を履いたまま着脱可能なサイドファスナーや裾にアイゼンガードの補強があったりと、雪山登山に対応した工夫を凝らした作りになっている。 |
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インサレーション (防寒着) |
山頂にいる時や、長時間の休憩時に更に防寒するためのジャケット。ダウンと中綿(化繊)モデルに大別される。ザックに入れられるコンパクトになるものを選ぼう。日帰りのピークハント目的で直ぐに下山するなら必要ない場合もあるが、現地が予想以上に寒かったりした場合のため、やはり念のため持っていくと安心である。 |
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フリース (ミドルレイヤー) |
保温性を確保するミドルレイヤーには、動きやすくて汗をかいても乾きが早いフリースジャケットがよく利用される。晴天で風が弱い日は、体温調節のためアウターを脱いでフリースが一番外側になる場合もある。自身の寒さへの耐性も鑑みて厚みや起毛量、フードの有無、素材等を選ぶようにしたい。 |
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化繊綿ジャケット (ミドルレイヤー) |
こちらもミドルレイヤーの候補の一つ。インサレーションの項と被るアイテムではあるが、化繊インサレーションジャケットは濡れにも強いので、薄手~中厚のタイプを中間着として行動中も常に着用することが出来る。フリースよりも防風性、撥水性に優れる点も魅力的。 |
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パンツ (ミドルレイヤー) |
ハードシェルパンツの下に何を履くかは意外と悩まれるかもしれないが、裏地が起毛している中厚~厚手のトレッキングパンツがおすすめ。雪山での使用を想定したモデルの場合、パンツ自体に撥水性を持たせてあったり、部分的な補強がされていたりと、気温が高ければハードシェルパンツを脱いでも問題ない作りのものもある。 |
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長袖シャツ (ベースレイヤー) |
アンダーウェアの上に着るシャツは、動きやすくて吸汗速乾性に優れた化繊やメリノウール素材のものを着用したい。特にメリノウールのものは温度調節や吸湿性、防臭効果にも優れているので、レイヤリングのどこかで一枚入れてあげると快適性が向上するのでおすすめ。 |
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アンダーウェア (ベースレイヤー) |
ウェア自体に高い保温性を持たせたものや、疎水性のある素材で汗離れを促進して体をドライに保つものなど、商品によって様々な特徴がある。ポイントは発汗をコントロールするドライレイヤーを着用していつも肌が乾いた状態をキープする事。何れにせよ直接肌に触れる部分なだけに、なるべく高機能なものを選ぶと登山が快適になる。下半身はパンツとアンダータイツを組み合わせると高い保温力を発揮する。 |
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グローブ |
指は冷えやすいので凍傷になりやすく、グローブによる保温、防風、防水対策は非常に重要。アウターとインナーが一体になった雪山向けのグローブを使うか、ウェアのレイヤリングのようにアウター、ミッドレイヤー、ベースレイヤーと異なる特性のものを組み合わせるかのどちらかが考えられる。グローブをしたままアイゼンの装着や細かい操作が出来るかも考えるように。 |
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ニットキャップ (ビーニー) |
気温が低いほど頭部からの熱の発散を防ぐことが重要。頭部の保温のために雪山ではニットキャップ(ビーニー)を被ることが多い。厚みや起毛量、素材により保温力や装着感は異なるが、ここはある程度好みのデザインで選んでしまっても構わない。バラクラバと併用するなら、そこまで分厚くないタイプ方が使い勝手はいい。 |
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ネックウォーマー (ネックゲイター) |
首元の保温も雪山登山においては大切。Buffを始めとする薄手でロング丈のタイプは、いざとなればニット帽と組み合わせてバラクラバのように鼻や耳も防寒することもできるので登山においては中々便利である。素材や構造に工夫を凝らした商品も多いので、デザイン含めお気に入りの一品を見つけたい。 |
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バラクラバ (目出し帽) |
首元から頭部までをすっぽりと覆い、顔の大部分をカバーできる。顔の中でも特に冷えやすい鼻や耳の防寒もしっかり出来るため、装着すると暖かさが全然違う。稜線歩きや強風等の悪天候時に活躍するのは勿論のこと、寒がりな人は防寒対策として常に持っていると相当安心である。 |
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ソックス | 耐久性やクッション性、保温力を兼ね備えた登山向けの厚手ウールソックスを1枚履くのが基本となる。靴下を重ね履きして保温力を上げる方法もあるが、多少靴の中でズレやすくなったり靴とのサイズ感に変化が起こるので、事前の確認は必須。もし重ね履きをするなら、薄手のインナー専用ソックスを合わせるのがおすすめ。 |

各社素材や形状を工夫して軽量で歩きやすいモデルが増えている。
雪山を登るのになぜ雪山用登山靴(ウィンターマウンテンブーツ)が必要なのでしょうか?夏山で履いている登山靴では駄目なのでしょうか?
一番の理由は寒さから足元を守ることにあります。雪山用登山靴は保温材が封入されているため、夏山用に比べて高い保温力を発揮します。靴を介して常に雪面に触れている足は冷えやすく、手のようにすぐさま追加で保温ができる訳でもないため、備えが不十分ですと最悪凍傷になる恐れも考えられます。
また、アイゼンの使用や雪面につま先を蹴り込むこと(キックステップ)を想定した設計なので、ソールも硬く作られていてアイゼンが外れにくく着地の際や蹴り込む時に足にかかる衝撃からしっかり守ってくれます。
サイズ選びについては、夏山用登山靴と同じくつま先先端部にゆとりがあるサイズ、足長の実測値+1cm~1.5cmを一つの目安とします(あくまで目安です)
実際に履く靴下を着用して足を入れて、靴紐をほどいた状態でつま先を靴の先端部に寄せて、かかとに指が1本入るくらいがちょうどいいサイズとなります。
履く靴下が夏よりも厚手になることで足のボリュームが増したり、モデルにより足入れの感じやフィット感は異なりますので、石井スポーツ各店でスタッフに相談しながら試し履きをして決めるのもおすすめです。
安心安全に雪山登山を楽しむなら雪山用登山靴を必ず履いていくべきですが、どうしても夏山用登山靴で登るのであれば、ソールが硬くてアイゼンの装着も可能なマウンテンブーツを選ぶようにして、コースは風が弱く穏やかな樹林帯の初級の雪山を選び、そのうえで好天の日(気温が高く風が弱い日)を狙って登るようにして下さい。
→メンズ ウィンターマウンテンブーツ商品一覧はこちらから。
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Ladies
基本性能はそのままに、足入れ部分にミニゲイターを装着、リムーバルタングを全面改良し装着時のフィット感、保温性が高まるなど性能面も向上。
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アイゼンの着脱は雪山登山ならではの風景
アイゼン選びにおいては以下のポイントを押さえておきましょう。
①爪の本数や形状により、使うべきシーンは異なる。
②登山靴との相性も、選ぶ上で重要になる。
③固定方法や素材の違いでも種類が分かれる。
④チェーンスパイクとアイゼンは別物
本格的な雪山登山では、雪や氷の斜面を確実に捉えるために前爪がある10本~12本爪アイゼンが必須となります。
登山靴のサイズや、前後コバの有無、ソールの形状等に応じて爪の本数や固定方法(バンド式、ワンタッチ式、セミワンタッチ式)の選択も異なってきますし、素材(クロモリやアルミ、ステンレス)の違いで強度や軽さが違うなど、似たような形状が多いアイゼンですが、細かく種類が分かれています。
履く登山靴との相性も重要で、相性の良いものを選べば歩きやすく、アイゼンも外れにくくなって安全性も向上します。
はじめてアイゼン選ぶ場合は、ご自身だけで判断するのは中々難しいこともあります。その際は、石井スポーツ各店のスタッフにお気軽にご相談下さい。→石井スポーツ店舗情報はこちらから。
また、以下に爪の本数の違いによるアイゼンの種類と特徴を簡単にまとめてみましたので、あわせて参考になさって下さい。
ここではアイゼンを爪の本数ごとに代表的な4つの種類に分類して、それぞれの特徴を簡単に解説いたします。
▶アイゼン商品一覧はこちら

前爪が2本飛び出している10本・12本爪アイゼンは、本格的な雪山登山に必要不可欠なアイゼンです。12本爪の方が制動力はありますが、靴のサイズが小さい方は10本爪アイゼンの方が歩きやすい場合もあります。
靴との相性や細かな仕様の違い、装着方法については石井スポーツ各店舗でサポートしておりますので、お気軽にお問い合わせください。

主に6本爪アイゼンのことを指します(8本爪も一部あります)。10本・12本爪アイゼンと違い前爪(つま先側に飛び出る爪)が無いため、急斜面や稜線上の凍った斜面ではつま先で蹴り込めません。使いどころを見誤らないようにしましょう。
主に夏の北アルプスの雪渓や、初冬期・残雪期の雪山低山、雪の積もった緩斜面等で使用されます。

主に装着範囲が土踏まずに限定される、4本爪アイゼンのことを指します。
軽量・コンパクトなのは魅力的ですが、制動力は他のアイゼンよりも弱いため、積極的な運用というよりは雪山低山などにおいて「念のため」ザックに入れておくと言った使い方が基本となります。

凍結した平坦部・緩斜面の林道や、雪道と夏道が混じり合った登山道など、アイゼンでは歩きにくいシーンで活躍します。
爪の長さが短くて歩きやすい一方で、雪や氷の急斜面や厳冬期の高山の稜線上で使うには制動力・耐久性ともに不十分です。本格的な雪山登山で使うアイゼンの代わりにはなりませんので、使うシーンを誤らないようご注意ください。

歩行時のバランス保持や滑落停止に必須の装備
ピッケルを選ぶ際は「ピッケルの長さ」「シャフトの形状」「強度」を意識してみましょう。
ピッケルの長さ選びは、ご自身の身長や登る山の難易度(斜度や使い方)により変化します。長いピッケルは「杖」として中~緩斜面での歩行の補助で使いやすく、短いピッケルは急斜面を登下降する場合やピックを雪面に突き刺す場合に使いやすくなります。
オールラウンドに使える長さをお求めであれば「身長×0.35」が一つの目安となります。まずは難易度の低い雪山中心に活動されるのでしたら、やや長め(身長×0.36~0.4)の範囲内で選ぶのも杖として使いやすくておすすめです。
また、シャフトは真っ直ぐのタイプとやや曲がっている(ベントシャフト)タイプがあります。杖として中~緩斜面の歩行の補助で使うなら真っ直ぐのタイプが使いやすく、急斜面で使うならベントシャフトの方が形状的に雪面に突き刺しやすくなります。
ヘッドやシャフトに「B」や「T」のマークが記されている場合は、それはピッケルの強度を示すマークです。「T」の方がより登攀が絡むようなテクニカルな使用に適していますが、一般ルートを歩く場合での使用ならば「B」の方でも十分です。
ピッケルの運用法で言えばトレッキングポールとの併用もおすすめで、樹林帯や緩斜面ではトレッキングポールを、稜線や急斜面など滑落の危険性が高まるシーンではピッケルをと、状況に応じて使い分けるとより歩きやすくなります。
(※長さ50cm以下のモデルを中心に、アイスクライミング用の「アイスアックス」もありますが、これらは一般的な雪山登山では適さないのでご注意ください。)
→ピッケル商品一覧はこちらから。
→ピッケルアクセサリーの解説はこちらから。
長さや形状により使い勝手がやや異なるピッケルの中から、4点をピックアップしてご紹介いたします。
ピッケル取り使い商品一覧はこちらをご覧ください。

有効活用出来ると雪山登山がグッと楽になる
雪山登山は夏季の安定した土の地面と違い、直近の降雪状況やトレースの有無等で当日のルートの状況は大きく変わってきます。
もし膝や腰まで体が埋まるような深雪・軟雪の状況に出くわしたら、いくらアイゼンを装着していても体が沈んでしまい、一歩一歩足を引き抜いて先に進んでいくのはとても大変で時間がかかってしまいます。
そのような状況下でも機動力を損なわないようにするためには、ワカンやスノーシューを装着して浮力を得るのがおすすめです。
両者の違いですが、スノーシューの方がより大きな浮力を得ることができて深雪でも沈みにくい一方、ボディーが大型で登山での急斜面での取り回しや重量・携行性の面でやや劣る、
ワカンの方が軽量で小回りが効いて登下降での取り回しに優れる一方、浮力の面ではスノーシューには劣る。と言った形です。
使用するフィールドに応じて多少得意不得意はありますが、どちらを選ぶにせよ持っていれば選択肢が広がり歩ける山域も増えるので、色々な雪山に登りたい方は持っておいて損はないギアとなっています。
→ワカン&スノーシュー商品一覧はこちらから。
「アバランチギア」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
「ビーコン」「プローブ」「ショベル」の3アイテムのことを指す言葉で、これらは雪崩が発生し登山者が埋没した際のセルフレスキューのために使われます。
ビーコンは自分が埋没した場合は発信機として、探索側の場合は電波をキャッチする受信機の役割を、プローブはビーコンで探索後、埋没者の位置を特定する道具、ショベルは埋没者を雪の中から掘り出すために使用します。
3点が揃ってはじめてセルフレスキューができるようになりますので、セットで揃えたいギアになります。
雪崩が起きる可能性のある山域に足を踏み入れるのであれば携行したいギアになりますが、使い方を理解してこそなので、購入した場合は講習会等に参加して使い方を学ぶことをおすすめいたします。
→石井スポーツアドベンチャーズ(登山学校)HPはこちらから。
→プローブ・ショベル商品一覧はこちらから。
→ビーコン商品一覧はこちらから。

3点が揃って、使い方を理解してこその雪崩対策用具である

鋭利な先端を覆うカバーは必須のアイテム
ピッケルのピックやブレード、スパイクは雪や氷に刺さるように先端は鋭利に出来ています。当然そのままザックに取り付けると自分も周囲の人も危険なので、各種ピッケルカバーは必須のアイテムとなります。
各部位の形状によりカバーにも相性があるので、迷ったらピッケルと同一メーカーのものや、汎用的に使えるタイプのものを選ぶとよいでしょう。
また、ピッケルを使用中は落とさないように必ずリーシュ(ピッケルバンド)で体につないでおきます。肩掛けタイプのショルダーリーシュと、手首に通すハンドリーシュの2種類がありますが、ピックを雪面に刺して登るようなルートでなければ、持ち替えが容易なショルダーリーシュの方が使いやすいと言えます。
ピッケルは使い方を誤ると怪我に繋がる恐れもありますので、これらカバーやリーシュの用意もお忘れなく!
→ピッケル用アクセサリ・パーツ一覧はこちらから。
「COCOHELI(ココヘリ)」は会員制捜索ヘリサービスで、入会金・年会費を支払い会員になると、手元に発信機(会員証)が届きます。
登山者は、この発信機を身に付けて山に行きます。そこで遭難など不測の事態に直面した場合にココヘリ緊急通報窓口に本人や家族・友人が連絡を入れることで、専用の受信機を持った捜索部隊が出動。発信機の電波をキャッチして遭難者の位置を特定し、消防や警察などの救助組織へ引継ぎ迅速な救助を可能とするものです。
加えてココヘリに入会すると、もれなくjRO(日本山岳救助機構合同会社)の捜索・救助費用補てんサービスを受けることができるので、実際に発生した探索費用の一部をjROのサービスでまかなうことができて、経済的負担から家族を守ることにも繋がります。
雪山登山はルートミスやホワイトアウト、雪崩、滑落といったように夏山以上に遭難のリスクは高いです。ご自身の安心・安全のためにも、また、帰りを待つご家族や友人のためにも、ココヘリへの入会を強くお勧めいたします。
▶石井スポーツココヘリ特設ページから申し込むと、入会金が¥1,000お得です!

発信機は小型軽量なので、登山の邪魔にはなりません。
はじめての雪山登山を、安心安全に楽しむために心がけたい5つのポイントをご紹介いたします。
1、なるべく単独行は避ける
道迷いのリスクや、雪山装備の使い方が分からなくなった時のために、
出来れば登りたい雪山を経験したことのある方と一緒に登ると安心です。
2、夏季より時間がかかると心得る
雪の上を歩くというのは、夏道よりも足をとられやすく時間がかかります。
余裕を持った登山計画を立てて、早出早着を心がけるようにしましょう。
3、最新の降雪情報、天気を確認する
雪山は一夜にして大雪が降り、それまでとは全く違う姿になることも。
情報収集は直前までしっかり行って、装備や計画に不備がないようにしましょう。
4、アイゼン装着の事前練習をする
道具は使いこなしてこそ。アイゼンの着脱でもたつくと時間に余裕が無くなります。
グローブをしたままでも確実な装着ができるように事前練習をお忘れなく。
5、決して無理をしない
なるべく晴れていて風の弱い日を狙うのが成功の秘訣。
途中で天気が悪くなってきたり、体調が優れない場合は無理せず引き返しましょう。
雪山にはじめて登るという方や、初級の雪山をお探しの方に向けたおすすめコースのご紹介です。
※雪山用登山靴やアイゼン等の雪山ギアの使用を想定したうえでのコース紹介です(例えば厳冬期でも雪があまり積もらないような山は選外としております)
※比較的登りやすい雪山とは言え、時期や気象条件次第で難易度が上がる場合もあります。必ず最新情報をご確認のうえ、準備・体調は万全にしてお出かけください。

道中にある北横岳ヒュッテ。休憩ポイントとなっている。
【八ヶ岳】北横岳 2,480m/長野県
コース:北八ヶ岳ロープウェイ山頂駅~坪庭~北横岳ヒュッテ~山頂~(ピストン)
難易度:体力★ 技術★ (5段階評価)
多くのガイドブックで雪山エントリーコースとして紹介されている人気の山です。
北八ヶ岳ロープウェイで標高約2,230m地点まで上がり、そこからスタートなので山頂までの距離も登る量も短く、多くが樹林帯で道も明瞭、危険個所もほとんどないため雪山をはじめて歩く方のアイゼン歩行の練習にもうってつけです。また、山頂周辺からの見晴らしの良い景色や道中の「坪庭」の庭園の景観は申し分ありません。坪庭周辺の散策もおすすめです。
装備については、道はよく踏まれているので軽アイゼン(6本爪)でも登れますが、前爪付きアイゼン(10~12本爪)の方が一部の斜度がある登り下りで安心です。ピッケルよりはトレッキングポールが活躍します。
いくら難易度が低めとは言え標高が高いので、天候や風の強さ次第ではかなり冷え込むこともあります。グローブやネックウォーマー、バラクラバ、保温ボトルなど防寒対策は怠らないようにして下さい。また、事前にアイゼンの着脱の練習をしておくのをお忘れなく。

赤城山の主峰、黒檜山山頂。霧氷も素晴らしい。
【北関東】赤城山(黒檜山) 1,828m/群馬県
コース:黒檜山登山口~黒檜山~駒ヶ岳~駒ヶ岳登山口
難易度:体力★★ 技術★
関東の名山、赤城山もアクセスの良さから人気の雪山の一つで、主峰の黒檜山に登るこのコースで4時間程の山行を組むことができます。
黒檜山登山口からの登りはトレースはしっかりしていますが、短いながらも歯応えのある急斜面もありますので前爪付きアイゼンの方が安定します。また、ピッケルよりはトレッキングポールが活躍します。山頂から直ぐの展望台からの景色も素晴らしいです。
黒檜山山頂から駒ヶ岳へは気持ちのいい縦走路が続きますが、積雪が多い場合はワカンが活躍する場合もありますので持っていってもよいでしょう。駒ヶ岳からの下りでは鉄階段が2箇所ありますので、転倒しないように慎重に通過しましょう。駒ヶ岳登山口まで下りれば車道に出てゴールです。
アイゼンやワカンなど雪山装備のテスト、訓練をするのにも丁度いい山だと思います。

山頂。"ガトーショコラ"とも形容される浅間山がよく見える。
【中信】黒斑山 2,404m/長野県・群馬県
コース:高峰高原ビジターセンター~表コース~トーミの頭~黒斑山~トーミの頭~中コース~高峰高原ビジターセンター
難易度:体力★★ 技術★
日本百名山で活火山の、浅間山の第一外輪山である黒斑山(くろふやま)は、冬季もよく登られる山の一つです。スタート地点の高峰高原が2,000m地点にあるため、そこまで登る量も多くなく往復3~4時間程度の山行を組むことが出来ます。山頂へは表コースと中コースの2つありますが、往路は途中で景色が開ける表コースがおすすめです。山頂周辺は木立が多いですが、浅間山がよく見えます。時期や積雪量にもよりますが、ワカンやスノーシューがあると復路で中コースを歩くのが少し楽しくなります。
装備は軽アイゼンで登れないことはないですが、道中のトーミの頭付近の急登などを考えると前爪付きアイゼン+雪山用登山靴が安定します。
ちなみに、黒斑山山頂から先に続く蛇骨岳や仙人岳への稜線の縦走路は、登山者が少なくなり一段階難易度が上がりますので、安易な気持ちで進むのは止めましょう。雪山にまだ不慣れなら、素直に黒斑山までの山行がおすすめです。

西穂山荘から先は稜線歩き。景色は素晴らしいが風も強い。
【北アルプス】西穂独標(or丸山まで) 2,701m/長野県・岐阜県
コース:新穂高ロープウェイ西穂高口~西穂山荘~西穂丸山~西穂独標~(ピストン)
難易度:体力★★ 技術★★ (丸山までの場合:体力★★ 技術★)
上記3つのコースよりはやや難易度が上がりますが、北アルプスの雪山入門として人気の山です。
新穂高ロープウェイを使って標高約2,150m地点からスタートします。最初は穏やかな樹林帯の中を登っていきますが、時期や直近の降雪次第では深雪になることもあるのでワカンが活躍する場合もあります。西穂山荘から先は絶景の稜線歩きとなりますが、それまでの環境とは打って変わって風が強く体感温度もぐっと下がります。バラクラバやオーバーグローブなど万全の防寒・防風対策に加え、雪山用登山靴に前爪付きアイゼンやピッケルは必須、ヘルメットやゴーグルも用意した方が安心です。
西穂独標直下の岩混じりの急斜面は、短いながらも登下降時に確実なアイゼンワークが必要となるため、不安な方や装備が不十分な方、天候が悪い場合等は手前の西穂丸山までにすることをおすすめいたします。