【2025年】天体望遠鏡の選び方 月・惑星・星雲など見たい天体で選べるおすすめ4選をご紹介

天体望遠鏡の選び方
天体望遠鏡の選び方

最終更新:2025/3/7

一年を通して、さまざまな星空の様子を楽しめるスターウォッチング。星の楽しみ方は人それぞれです。見たい星や天文イベントに合わせて最適な機材を選ぶことで、快適にスターウォッチングを楽しむことができます。
天体望遠鏡は天体観測の代名詞的なアイテムで、惑星や星雲など、遥か彼方の星の姿を詳しく見るのに欠かせません。鏡筒の種類や倍率による見え方や扱い方の違いなど、天体望遠鏡選びにはいくつものポイントがあります。

見たい天体や観測の目的に合わせた天体望遠鏡の選び方と、おすすめモデルをご紹介します。

天体望遠鏡の選び方


【ポイント1】天体望遠鏡の構成を確認

天体望遠鏡は主に「鏡筒」「架台」「三脚」の3パーツに分けられます。これらのパーツに「接眼レンズ」「ファインダー」などがセットになったものが一般的なパッケージですが、使用用途に合わせてパーツ単品で買い増しし、組み換えて使用することができます。



・鏡筒
天体望遠鏡の本体部分で、いくつかのタイプに分けられます。星の光を集める対物レンズや反射鏡(主鏡)と、目で見るための接眼レンズで構成されています。対物レンズ・主鏡の口径(有効径)が大きいほど、暗い天体も見やすくなります。

・架台
目標とする天体に合わせて鏡筒の向きを変えるための重要な役割を担っています。気軽に天体観測を楽しめる手動の経緯台と、長時間の観察や写真撮影に適した自動制御の赤道儀に分けられます。

・三脚
カメラや雲台よりも大きな天体望遠鏡を支え、安定して操作可能な大型三脚です。架台と同様に小さな天体を見るには、微妙な揺れも見え方に大きく影響してくるので、しっかりしたものをおすすめします。

・接眼レンズ(アイピース)
天体望遠鏡の、目で覗く側のレンズです。差し替えにより交換可能で、鏡筒と接眼レンズの組み合わせで天体望遠鏡の倍率が決まります。接眼レンズの光学性能によっても見え方が大きく変わるので、小さいですが最も重要なパーツのひとつです。

・ファインダー
天体望遠鏡の導入(セッティング)時に使う、低倍率の小型望遠鏡です。接眼レンズから見るのと同じ目標物が見えるよう調整します。赤色LED光を使用し等倍で目標を探すスポットファインダーもあります。




【ポイント2】鏡筒(望遠鏡本体)の種類をチェック

●屈折式
対物レンズを使って光を集めるタイプで、視界全体が安定していてコントラストの良い、オールマイティな望遠鏡です。手入れがしやすく扱いやすいので、初心者でも安心して使用できます。3つのタイプの中で唯一太陽観測もできます。(別途専用アクセサリが必要です)
レンズを数枚使うため、他の形式と比べ重量があり、価格も高くなります。

●反射式
凹面鏡を使い、光を集めるタイプです。色収差が発生せず、中心部が非常にシャープに見えるのが特長です。また、大口径のものでも比較的手ごろな価格で手に入ります。
鏡筒前方が開いているのが特徴で、屈折式と比べてこまめなメンテナンスが必要なこと、鏡筒内外の温度差によって筒内気流が発生するため、使用前に外気に慣らす必要があることなどの注意点があります。

●カタディオプトリック式(反射屈折式)
屈折式と反射式の利点を組み合わせたタイプで、各収差を良好に抑えつつ、短い鏡筒で長い焦点距離の設計にできるため、持ち運びや観測が楽にできます。本格的な天体写真撮影にもおすすめです。
一方で反射式と同様に温度差による筒内気流には気を付けなければならず、セッティングから観測まで少し待って外気に慣らす必要があります。


【ポイント3】架台(マウント)の種類をチェック

架台には手動で向きを調整する「経緯台」と、モーター駆動により自動で天体を追尾する「赤道儀」があります。
星空は地球の自転により、太陽や月のように時間とともに東から西へと動いていきます。(日周運動)そのため、天体望遠鏡を同じ方向に向けていても、ほどなく天体は視界の外に行ってしまいます。
架台は鏡筒を三脚にマウントするだけでなく、動く星を追うのにも重要な役割を担っています。倍率が上がればその分星の動きも早くなるため、手動で追尾し続けるには慣れが必要になってきます。その問題を解消し、観測に集中できるようにするのが電動の赤道儀です。赤道儀も精度によって価格が変わってくるため、熟練度や予算に合わせて選ぶことをおすすめします。

●経緯台
星の動きに対して上下左右の2方向へ望遠鏡を動かして星を追います。軽量でセッティングや操作が簡単なので、初めて天体望遠鏡を使う方や、学習用の望遠鏡に最適です。常にハンドル2本で操作し続ける必要があるため、150倍以上の高倍率で長時間観測するのにはやや不向きです。

●赤道儀
天空の中心(北半球なら北極星)を軸として、星の動きと同じ円を描く動きをする架台です。目当ての天体を見失わず、より正確に追跡できます。モーター内蔵のため経緯台と比べて重く、使用前には中心に向けて極軸合わせが必要など、手軽に使えるものではないため、本格的な天体観測や写真撮影をしたい方に向いています。


【ポイント4】見たい天体に合った倍率と口径で選ぶ

●天体望遠鏡は鏡筒と接眼レンズの組み合わせで倍率を変えられます
一般的な天体望遠鏡は2つの接眼レンズが付属しており、観測対象に合わせて付け替えることで倍率を変更することができます。接眼レンズは単品でも販売していますので、付属品では欲しい倍率にならない時や、より見え味の良い接眼レンズにしたい場合などは買い足すことができます。現行の天体望遠鏡の接眼レンズ取り付け径は31.7mmか50.8mmが多く、規格が合っていればメーカーを問わず使用できます。(海外製品や古い製品ではサイズが異なる場合があります)

●適性な倍率で使用することが快適な天体観測のポイント
遠くの星をできる限り大きく見たいとは誰しもが思うことですが、天体観測の場合は、倍率よりも分解能や集光力といった光学的な性能で見え方の良し悪しが決まります。これらの性能は対物レンズや主鏡の口径(有効径)が大きいほど良くなります。また、口径の大きさによって性能を発揮できる適性な倍率があるため、その範囲内の倍率で使用することが大切です。

[月] 40~150倍

60mmクラスの入門モデルから観測できます。倍率50倍で月が視野全体に広がり、70倍以上になると無数のクレーターや海の凹凸が確認できます。

[土星] 70~150倍

100倍前後から、特徴的な環の様子が確認できます。60mmクラスで最大の衛星であるタイタンが確認できます。80mmクラスなら本体の縞模様や環の濃淡・カッシーニ溝も判別できるようになり、100mm以上のクラスではさらに他の衛星も観測できます。

[木星] 70~150倍

本体が明るく、高倍率での観測にも適します。中倍率でも80mmクラスから縞の構造や4つの衛星の位置がおおよそ確認でき、150倍以上の倍率ならスケッチもしやすくなります。

[火星] 90~150倍

大接近時には、60mm~80mmクラスの100倍前後から極冠や薄暗い模様を確認できます。高倍率で細部まで見たい場合は、100mm以上の大型モデルがおすすめです。

[水星・金星] 60~100倍

中倍率から水星の三日月形や金星の満ち欠けが観測できます。高倍率で観測するには、100mmクラス以上の大口径望遠鏡が必要です。

[星雲・星団] 20~100倍

ほとんどが50倍以下での観測に適します。大口径ほど明るく良く見えますが、屈折式以外の鏡筒は倍率を下げ過ぎると副鏡の影が視界に入ってしまうので、注意が必要です。

[彗星]

低倍率の入門向け天体望遠鏡でも観察できます。長く尾を引いているときなど、彗星全体を見たい場合は双眼鏡の方が観察に適しています。

[太陽]

天体望遠鏡で直接太陽を見てはいけません。屈折式の天体望遠鏡でのみ、太陽投影板というアクセサリに映して間接的に観測することが可能です。


【ポイント5】天体望遠鏡のスペックの見かたをチェック

●鏡筒のスペック

倍率
望遠鏡の倍率は対物レンズ/主鏡の焦点距離を接眼レンズの焦点距離で割ることで求められます。
 例)910÷20=45.5倍

対物レンズ/主鏡有効径
対物レンズや主鏡の実際に使われている部分の大きさを直径で表したものです。 有効径が大きいほど光をたくさん集めることができ、明るい視野を得ることが可能です。 星雲や星団などの暗い天体を観測する際はなるべく有効径の大きい望遠鏡をおすすめします。

■焦点距離
対物レンズの中心または主鏡の中心から像を結ぶ焦点までの長さです。

口径比(F値)
焦点距離を対物を対物レンズ/主鏡有効径で割ったもので、1:15のように表されます。 また、F15のように表記されることもあります。数値が小さくなるほどの明るいレンズであることを表します。
 例)910÷80=1:11.375(F11.4)

極限等級
どれくらい暗い星まで見えるかを表したものを極限等級といいます。 肉眼での極限等級は6.5等星くらいまで(光害は考えない)で、望遠鏡では対物レンズ/主鏡有効径が大きくなるほど暗い星まで見ることができます。

集光力
肉眼に比べて何倍の光を集めることができるかを示したものです。 対物レンズ/主鏡有効径が大きくなるほど暗い星まで見えるようになります。

■分解能
二つの接近したものを見分ける能力で、二重星を見分ける時に重要になります。 分解能は116[秒※]÷対物レンズ/主鏡有効径の式で求められます。
※秒(秒角)……1度の1/3600の角度
 例)116÷80=1.45秒
  (1.16秒は4km先にある1円玉の大きさに相当します)


●接眼レンズ(アイピース)のスペック

焦点距離
鏡筒との組み合わせで倍率が決まり、接眼レンズの焦点距離が長いほど低倍率に、短いほど高倍率になります。また、倍率を上げていくほど見える範囲は狭く・暗くなり、逆に倍率を低すると、見える範囲は広く・明るくなります。

見掛視界
接眼レンズをのぞいたときに一度に見渡せる範囲を「見掛視界」と呼びます。星雲・星団など、低倍率で広く見渡したい時に重要になります。

アイレリーフ
接眼レンズから「ひとみ」ができる位置(アイポイント)までの長さをアイレリーフといいます。アイレリーフが短いものは接眼レンズに目を近づける必要があり、眼鏡を掛けたままでの観測などには不向きとなります。

差込径サイズ
接眼レンズの差込径には規格があり、サイズが合っていればメーカーをまたいで使用することができます。

24.5mm――1980年代まで主流となっていた規格ですが、現在の天体望遠鏡ではほとんど使われていません。
31.7mm――現在主流となっている規格です。広視界タイプやアイレリーフが長いものなどさまざまなバリエーションがあります。
50.8mm――最先端の光学設計を駆使した超広視界アイピースなどに用いられている規格です。一般的な天体望遠鏡にはアダプターを併用して使用します。



【ポイント6】天体写真の撮影方法をチェック

●天体望遠鏡を使う撮影方法

天体望遠鏡は、各種アダプターを使用してカメラと接続して写真を撮影することができます。高倍率や暗い天体の撮影では長時間露光で星を追い続ける必要があるため、モーターによる自動追尾機能を搭載した赤道儀も必要になります。

[直焦撮影]
一眼レフやミラーレスのボディに、望遠レンズのように天体望遠鏡の鏡筒を取り付けて撮影します。拡大撮影と比べ被写体は小さいもののシャープに写せるため、月の全体像や星雲などの撮影に適しています。

[拡大撮影]
カメラと鏡筒の間に接眼レンズを収納した拡大アダプターを加えることで、直焦撮影の数倍から数十倍の大きさで撮影できます。月面のクレーターや惑星を撮るのに使用します。

[コリメート撮影]
接眼レンズの後にコンパクトカメラやスマートフォンを接続し、拡大された星像をそのまま撮影します。カメラのレンズも通すため、拡大撮影と比べシャープさは落ちますが、月や金星など明るい天体は長時間露光も必要なく、手軽にダイナミックな写真が撮影できます。

●ポータブル赤道儀を使う撮影方法

天体望遠鏡ではなくカメラを載せて星を追尾するアクセサリとして、ポータブル赤道儀があります。星空の撮影には長時間露光が必須となるため、通常の三脚に固定して撮影すると、露光時間によっては星の光は点でなく線になって写ります。そのため、よりはっきりした星空を写すなら、ポータブル赤道儀によるガイド撮影がおすすめです。

[星景写真]
星空と地上の風景を一枚に収めた写真です。日周運動と等速では星は止まっていても地上の風景が流れてしまうので、日周運動の半分の速度で追尾しながら、短めの露光時間で撮影します。

[星野写真]
星空の一部分のみを切り取った写真です。日周運動と等速で追尾することで長時間露光でも星の光が線状にならず、肉眼では見ることの難しい星雲・星団もはっきりと写すことが可能です。

よくあるご質問


天体観測はどの時期がおすすめ?
夏の空は大気中に多くの水蒸気を含むため、星の姿が鮮明に見えにくいことがあります。一般的に、晴れの日が多く空気が澄んでいる冬が観測に向いているとされていますが、冬も上空に流れるジェット気流の影響で星の光が揺らいでしまうことがあります。(冬の天体観測は双眼鏡がおすすめです)
それぞれの季節でしか見ることができない星空もありますが、初めて天体観測をするなら、湿度が下がってきて気温も寒すぎない秋が最適です。
初心者はどの天体の観測から始めたらいい?
月は天体の中で明るく見つけやすいため、初心者でも簡単に見つけ観測することができます。天体観測を初めてチャレンジする方には、まず月の観測をしてみて、操作方法や倍率の違いを覚えましょう。
ただし、満月は明るすぎて凹凸が見えにくいため、欠けた月の観測のほうが楽しく観測できます。
夜空を観測する前に準備すべき事は?
天体望遠鏡本体とファインダーが同じ目標に向かっている様に調整する必要があります。ファインダー調整は手元が見やすい日中のうちに、あらかじめ地上の建造物など動かない目標物を使って行っておきましょう。太陽を見ないよう十分に気を付けてください。
天体望遠鏡の導入に必要な北極星の見つけ方は?
北極星は近くに明るい星がないため、目視で識別できます。北の方角を向いて星座早見盤などと星の並びを比較することによって、見つけやすくなります。また北斗七星やカシオペヤ座を使った探しかたも良く知られています。
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